庭園を内包する離宮

オーナーの希望は、皇居のような趣のある佇まいだが華美ではなく、広々と広がりのある空間の中で緑を感じられる住まい。そのため、モダンの中にナチュラルな要素を取り入れ、素材感を生かした仕上がりを目指した。外観は悠然とした佇まいを引き出すためシンメトリーを意識し、門から敷地内を進むアプローチに屋根をかけて天空のレッドカーペットのようにゲストを誘導する。その道にもドラマを持たせ、屋根の一部をガラスで仕上げ空を見せた。

この住まいの特徴は、家の中心に3層吹き抜けのパティオを配置し、トップライトからパティオを通して室内に光を届けると共に、公園のようなスペースを設けたプラン。建物内に外部の要素を取り込み、各階の部屋からパティオを憩いの場として眺める設計。当初は水盤を計画していたが、湿気対策を考慮して和紙を挟んだファブリックガラスをライトアップし、小川のようにせせらぐデザインとした。トップライトから注ぐ光に満たされ、水と緑を感じるパティオに仕上がった。

リビングはパティオと広い芝生の庭に挟まれ、3方向に開口部のある抜群の開放感を得た空間。当初、テレビが置かれた壁の両サイドはクリアなスリット窓を想定していたが、隣家からの視線を配慮して、完成時は不透明なタペストリーガラスに変更された。

ダイニングキッチンのCG。
リビングと隣接したダイニングキッチンも2層吹き抜けの大空間に。こちらも正面の大開口から庭を臨むアウトドアダイニングの手前の右側に壁面を流れ落ちる滝があり、完成時と変わらない仕上がり。トップライトや吹き抜けを多く取り入れることで立体的な空間構成を叶え、常に目線の先には緑を愛でる。

庭から見た外観。御影石の外壁に小端積みの粘板岩がアクセントとなり、モダンさの中にナチュラルな素材を加え、互いの長所を活かしたデザイン。