アーネストコラム洒洒落落の最近のブログ記事

これからも歩み続ける気仙沼


来年で震災から10年を迎え、気仙沼にもやっと日常が戻りつつあります。
前回お話した遠洋鮪延縄漁業ですが、出港の際に「出船おくり」が行われます。「出船おくり」とは、漁に出る船を乗組員の家族や友人、船主、関係者が航海の安全と大漁を願って岸壁から見送る、気仙沼の行事です。今、この「出船おくり」が観光イベントのひとつになっています。
気仙沼の女将さんが結成した「気仙沼つばき会」のみなさまの取り組みによりご来訪の方々も参加できるようになり、気仙沼の観光情報サイトでも「出船おくり」の日時が記載され、観光客の方も参加できる行事となりました。
漁船は大漁旗が飾られ、船主の好みの曲などを鳴らしながら出港し、見送る家族は色鮮やかなテープと福来旗を振って見送ります。


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気仙沼港の出船おくりの様子
出展:【公式】気仙沼の魅力をいっぺぇ詰め込んだ観光情報サイト


当社の船が出港する際も「出船おくり」を行いますが、船が無事に出港していく姿を見るとホッとします。船を無事に出港させるためには、さまざまな準備があります。今年は特に新型コロナウイルスの影響で気苦労が絶えませんでした。
外国人船員はギリギリ入国することができ、船員全員に検査を受けてもらいました。船は3密です。もし、船員の誰かが無症状で発症していたら海上で船員全員が新型コロナウイルスに感染してしまいます。そのため、今回は「出船おくり」から2週間は安心できませんでした。
2週間が過ぎ、体調を崩した者が居ないと報告を受けた時、やっと肩の荷が下りた気持ちになりました。現在も元気にマグロを追い求め、太平洋を中心に世界の漁場を渡っています。




震災から10年を迎えるにあたり、当社の復興プロジェクトも来年竣工を迎える本社の建て替えで、ひとまず終了となります。
本社は気仙沼港の目と鼻の先にありましたが、先代が残してくれた鉄筋コンクリートの頑丈な建物で、倒壊は免れました。しかし、防潮堤を再建築する新たな計画は国道を最大で約2.5メートルかさ上げし、防潮堤と国道の高低差を最大で70センチに抑えるため、取り壊しとなりました。
先代は船を何隻も造船していたので、建築にも詳しく、以前の本社は先代の想いが詰まった建物でした。しかし、地域の安全のためには仕方ありません。そのため、新しい本社も以前の面影を残した佇まいになる予定です。
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初代の本社ビル


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先代が建てた震災前の本社ビル


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来年竣工予定の本社ビルのCG
時代が移り変わっても、「気仙沼の新鮮な魚を届けたい」という信念は創業当時から変わることはありません。




震災から10年が経過しようとしている今、東日本大震災で被災し、再建を進めてきた「浮見堂(うきみどう)」が2020年7月に完成し、その他にも、「氷の水族館」や「シャークミュージアム」、内湾地区の再生を図る観光集客拠点とした商業施設「迎(ムカエル)」などやっと復興が形になり、さぁこれから!と言う時に世界を襲った新型コロナウイルス。気仙沼の観光も打撃を受けています。
当社も給食の停止や飲食店の自粛営業。宴会やイベントの中止によって大きな影響を受けました。


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浮見堂(うきみどう)


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氷の水族館


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シャークミュージアム
出展:【公式】気仙沼の魅力をいっぺぇ詰め込んだ観光情報サイト


しかし、10年かけて一歩一歩着実に進めてきた復興プロジェクト。気仙沼はこれからも歩みを止めることはありません。皆様が安心して気仙沼にお越し頂ける日を心待ちにしています。
その日が来るまで、気仙沼の海の幸は通販でご賞味頂ければ幸いです。是非、川印・気仙沼ブランドの新鮮なマグロや海の幸をお楽しみください。


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村田漁港公式サイト



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遠洋鮪延縄漁業


今回は、村田漁業が行っている遠洋鮪延縄漁業についてお話したいと思います。
前回のお話でも触れましたが、遠洋鮪延縄漁業も人手不足の状態です。特に船舶職員という船長機関長などの資格者の高齢化が進んでいます。船員は外国人の方を戦力にしていたのですが、後継の資格者がおらず、一番多い時は船を10隻所有していましたが、現在は2隻で操業しています。
そのうちの1隻『第8大功丸(479屯)』は、最新鋭の船凍技術を搭載し、2014年4月に水産庁の漁業構造改革推進事業により竣工した遠洋鮪延縄船です。最新技術よって凍結された製品は想像以上の出来栄えで、まさに鮮度抜群です。私達はマグロの漁師として、この美味しい『気仙沼産船凍マグロ』の普及拡大に努めています。


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第8大功丸(479屯)


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進水式の様子




遠洋鮪延縄漁業は最低1年間は気仙沼に戻ることはありません。気仙沼から南米ペルー沖まで行くのですが、漁場が港から離れているためどこかの港に行こうとすると1~2週間かかってしまいます。そのため、ハワイのホノルルとパナマを基地にしてタンカー船が運航しているのですが、彼らが野菜などの食料を積んでいるので1ヶ月に一度くらい、燃料や食料を購入しています。なので、一度漁に出てしまうとほぼ海上で過ごすことになります。


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気仙沼港




クロマグロや南マグロなどの値の張る魚の個体数の減少が危惧され、十数年前から国際的に資源管理がされています。そのため今はかなり回復してきたのですが、現在はメバチマグロ、キハダマグロ、メカジキなど、今まで手頃な価格で手に入っていた魚の漁獲量が減っています。これらのマグロを以前は当社でギフトセットを組み合わせて販売していましたが、震災後から極力お客様にセレクト頂くスタイルを取っています。贈呈用でも、お送りする方の好みにあわせて送りたいという方が今は多いですね。そのニーズに応えるようにしています。
銀座のお寿司屋などにも卸している『気仙沼産船凍マグロ』。当社では個人販売にも力を入れています。消費者の方と直接つながり、高品質な気仙沼産の海の幸をリーズナブルな価格で販売することで、全国の皆様への恩返しを込めています。ぜひ、マグロをはじめとした鮮度抜群な気仙沼産の海の幸をご賞味ください。


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マグロの水揚げ風景


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気仙沼産船凍マグロ




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村田漁港公式サイト



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再開後の問題


製氷工場を2011年8月にマグロの加工工場を11月に復旧し、何とか会社を稼働させることができましが、問題はまだまだ山積している状態です。
3月に震災があり、11月に稼働となりましたので約8ヶ月です。社員の頑張りもあり、比較的早い段階での稼働にこぎつけましたが、それでも今までお付き合いがあった業者さんは他で魚を調達しなければなりません。
再開できたと連絡をしても、もう違うところと取引をしていると言われて、販路を失うこともありました。


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村田漁業で取り扱っている商品。漁師の目で選び抜かれた気仙沼の幸は全て冷凍品になります。鮪製品は柵状で、カツオ、ビンチョウは節状になっています。




事業を再開してからも問題は続きます。「風評被害」の問題です。
事故地である福島県やその周辺地域の農水産物や商品を忌避する動きがあり、なかでも事故地域の農水産物・畜産物の価格の下落、買い控えといった消費者に直接的に関係のある食品関連の風評被害が多かったです。
気仙沼も例外なく風評被害の影響を受け、当時はトラックが福島を通っていくだけで嫌がられることも度々ありました。
当時に比べれば、大分改善しましたが、震災から来年で10年という月日が流れても、風評被害がゼロには至っていないと思います。




もうひとつの問題は人口の流出です。
震災で親戚や知人を頼り、県外に移り住む人が多く、区画整理事業などが完了した今も住民の帰還はあまり進んでいません。それは、気仙沼だけの問題ではなく、被災地となった多くでその傾向が強いです。
その為、人手不足に陥っています。特に魚の加工をする仕事は敬遠されます。その為以前のように専門で作業をするということは無く、異なる魚の加工を社員総出で行ってフォローしています。


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松岩冷凍工場は冷凍工場に加工工場を併設し、水揚げされたマグロなどを商品として加工・出荷します。工場内では徹底した衛生管理のもとに作業が行われ、安全で新鮮な商品をお届けしています。


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仕入れた原材料や製品の一部は、-55℃に保たれた施設で万全に保管し、鮮度を守ります。




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村田漁港公式サイト


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復興の一歩


当社は宮城県気仙沼で明治41年に鮮魚仲介業として創業以来、これまで一貫してマグロを取り扱って参りました。
東日本大震災によって、所有する遠洋鮪延縄漁船は6隻から2隻となり、本社を含め工場や倉庫など10カ所が全壊の被害に遭いました。震災から来年で10年。節目の年にようやく本社も完成となり、ひとまず復興プロジェクトは最後となります。
今回、その本社を設計頂いたご縁で、アーネストさんのブログにご寄稿をさせて頂くこととなりました。震災から10年の歩みと共に当社の取り組みをお伝えできればと思います。




東日本大震災によって加工場や製氷工場が大破。計10箇所の工場や倉庫が被害を受けました。本社は鉄筋コンクリート造だったため倒壊は免れましたが、防潮堤の再建による区画整理で取り壊しを余儀なくされました。
当時、倉庫内にマグロやカツオが約400トンあり、倉庫の被害損害だけで2億円以上。天災ということで何の保証もありませんでした。また、腐敗してしまうため衛生的にそのままにしておけず、地震後すぐに処分しなければなりませんでした。大切な商品が重機でごっそり持ち上げられる姿は切なかったですね。負を背負っての復興です。


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震災当時の写真


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倒壊した製氷工場


でも、黙々と瓦礫の片づけをする従業員の姿を見たときに、絶対に元に戻してみせると決心しました。ただ、失業保険の給付のために従業員を一時解雇せざるを得なかったときは、本当に辛かったです。社員は一旦解雇というかたちを取って失業保険で生活をしていただき、会社を稼動させることができるようになった時点で、再雇用しています。その間、労働基準で認められた1日4時間の勤務時間を守りながら復旧の作業を進めてもらい、従業員のほとんどが会社に戻って来てくれ、嬉しかったです。
従業員の頑張りもあり、その年の8月に製氷工場を復旧させることができました。漁には鮮度を保つため大量の氷が必要です。製氷工場ができないと気仙沼に船が帰ってくることができません。沿岸の小舟はかなり被害に遭いましたが、遠洋に出ていた多くの船は無事だったため、製氷工場の再建は急務でした。


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復旧した製氷工場


気仙沼の復旧は早かったと思います。氷もですが、油の施設だったり、食料の供給とか。市場は6月から稼働するなど、そういう面ではみんなすごく頑張っていました。
そして、マグロの加工工場が11月に復旧させることができ、年末のギフトになんとか間に合わせることができました。マグロの加工工場が完了した時点で、会社を稼動させることができ、なんとか震災前の業務体型で運営できるようになりました。




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村田漁港公式サイト



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「アーネストコラム洒洒落落」第62回目の連載がはじまります。


アーネストとご縁が繋がった方々が、それぞれの視点で自由にテーマを設定し執筆いただく全4回の連載コラム「洒洒落落」。
次回、9月7日(月)より第62回の連載を開始いたします。


今回のゲストは村田漁業株式会社 代表取締役社長 村田憲治さんです。明治41年に鮮魚仲介業として創業以来、遠洋鮪延縄漁でのマグロ漁及び気仙沼の鮮魚を取り扱っておられます。今回のブログでは、2011年3月11日に発生した東日本大震災の当時の状況から、来年で10年を迎える復興の歩みについてお話いただきます。


*** プロフィール ***


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村田 憲治
KENJI MURATA


経歴
東京経済大学 経営学部卒業
1982年 東京築地市場にて勤務
1984年 家業である村田漁業株式会社入社 専務取締役就任
2007年 代表取締役に就任 現在に至る
2017年 気仙沼漁業協同組合専務理事就任




村田漁業株式会社


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村田漁業株式会社は、遠洋鮪延縄漁で世界の海を知り尽くした漁師がその目で厳選したマグロを筆頭に、漁獲高連続日本一を更新し続けている気仙沼産のカツオ、さらにはサンマや紅鮭など、プロがおすすめする"美味しい魚"をお届けいたします。また、製氷工場を運営し、製氷された氷の重さは1個約140kg。-10℃に保たれた倉庫で保管された高品質の氷は、航海中の漁獲物の鮮度を保つためにも使われ、気仙沼の漁業に貢献しています。


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村田漁港公式サイト





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アレキサンダー・ラモント 2020新作コレクション"Sirena"


フレンチ・アール・デコに触発されたアレキサンダー・ラモントの素材をご紹介する4回シリーズですが、早くも最終回です。
アレキサンダー・ラモントは、今年設立20年の記念の年を迎え、本来であれば3月末にバンコクのフラッグシップショップで各国のディストリビューターや顧客を招いてのイベントを開催予定でした。私も渡航を楽しみにしていたのですが、新型コロナウィルスの影響で中止となってしまいとても残念です。今回イベントで発表する予定だったコレクションが「SIRENA(シレーナ)」というアフリカがテーマのコレクションです。アフリカ芸術は、アール・デコの時代においても芸術家や建築家に大きな影響を与え、どっしりとした家具や、アフリカのパターンなど、アフリカの影響を受けたスタイルが当時の室内装飾に使われました。


ラモントの創業者アレックスはイギリス人ですが、実はご両親のお仕事の関係で幼い頃をアフリカ・ケニヤのヴィレッジで過ごした経歴を持っています。


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ケニアが植民支配から独立して6年後の1969年、アレックスは母とケニアに到着。父親の仕事の関係で、アレックスは世界の様々な工芸品に触れ育つ経験をしました。


アフリカでの経験が自分に影響を与えているというアレックスですが、その思い出が「SIRENA」コレクションには織り込まれています。線、形、質感を通じて表現される象徴的なアフリカのエッセンスが、ブラジル出身デザイナー、アントニオ・ダ・モッタとのコラボレーションにより力強くデザインされました。


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Eshú Coffee Table by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / センターテーブル / 素材:ストロー・マルケタリー、ブロンズ
ロストワックスブロンズ製法で鋳造された荒々しい質感の脚が、動的なテーブルトップを支えています。その天板は5色のコーラルカラーで染めたストローが寄木されたものです。ナイジェリアのヨルバ族の持つ力と信念に対する考え方にインスピレーションを受けたデザインです。


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(クリックすると大きな画像でご覧いただけます)
Shangó Floor Lamp by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / フロアスタンド / 素材:オニキス、ブロンズ
琥珀色のオニキスをカットし、ブロンズの柱にアクセントとして加えたフロアランプ。シャンゴとは、ヨルバ族に伝わる神で、雷と嵐を司り、その象徴は両刃の斧とされています。


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Yemanyá Wall Sconce by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / 壁掛け照明 / 素材:ブロンズ、金箔
ブロンズ製の黒のナツメグを金箔の光で後から照らします。イエマーニャは、アフリカやブラジルで、海の創造にかかわる女神の意味があります。


アール・デコ時代の装飾の特徴は、モダンなスタイル、クラフツマンシップ、稀有で豊かな素材の使用などが挙げられますが、「SIRENA」コレクションにも様々な工芸的手法をモダンに見せたアイテムが発表されています。


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Fourgere Dining Table by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / ダイニングテーブル / 素材:シャグリーン、ブロンズ
Cupola Ceiling by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / シーリングライト / 素材:卵殻、ブロンズ、金箔
シャグリーン(エイ皮)をテーブルトップに使用したダイニングテーブルの上には、卵殻による漆塗り手法の照明が設置されています。内側に加工した金箔の光が叙情的な輪となって詩的に床面に広がります。


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第2回のブログでお伝えした卵殻漆が使用された照明外側の加工。


アール・デコのデザインでは「鮮やかな色彩」も特徴的であり、当時バレエリュスの舞台を彩ったレオン・バクストのセットデザイン、アンリ・マティスに代表されるような初期のフォービズム、ファッションデザイナーであるポール・ポワレの作品などに美しいカラーが見られます。2020年ラモントの「SIRENA」コレクションでも、「カラー」を一つの特徴として紹介したアイテムがあります。いずれもラモントが得意とする素材によるものです。


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(クリックすると大きな画像でご覧いただけます)
Lapis Side Tables by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / サイドテーブル / 素材:漆、ブロンズ
シグニチャーマテリアルでもあるライ麦で原型をとったブロンズの脚を持つサイドテーブル。トップには、半貴石のブルーの色調によるカボション(半球型)をセッティングし、塗装をかけることで強度を高めています。


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(クリックすると大きな画像でご覧いただけます)
Volta Mirror by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / ミラー / ストロー・マルケタリー、真ちゅう
自然を感じさせる色のスペクトルが、ひとつひとつ厳選しながら手で選ばれたライ麦によって生き生きと表現され、陰影の効果が美しいエレガントなミラー。


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(クリックすると大きな画像でご覧いただけます)
Plume Floor Lamp by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / フロアランプ / 素材:ストロー・マルケタリー、ブロンズ
黒檀色から淡い色までをライ麦に手染めし、グラデーションで寄木加工。濃淡のスモーキーなトーンが美しいストロー・マルケタリーの照明スタンドです。ベースにはブロンズが使用されています。


2020年SIRENAは、アフリカの力強い造形、モダンな洗練されたスタイルが際立ち、特に美しい「青」やシックな「黒檀・琥珀・珊瑚」のカラーが揃いました。上記にご紹介したのは中心的なアイテムですが、以下のムービーではアレックスがコンセプトを語り、さらに全体がご覧いただけます。


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↑画像をクリックすると「SIRENA」コレクションのムービー(4:40)をご覧いただけます。
*右下のCCから日本語の字幕が選べます。


今回4回にわたりアレキサンダー・ラモントで使用される素材は何を背景としているのかについて書かせていただきました。聞き慣れない素材もあったと思いますが、アール・デコの素材、例えばストロー・マルケタリーやパーチメントはいくつかのヨーロッパ家具ブランドでも取り扱いがあります。エルメスメゾンからはジャン・ミッシェル・フランクの復刻版が発売されており、アルマーニカーサでもストロー・マルケタリーの家具を見たことがあります。いずれもモダンな表現と素材へのこだわりを持つブランドが扱っており、アール・デコのマテリアルやデザインは、ヨーロッパの人々にとっても憧れのスタイルなのだとわかります。
アレキサンダー・ラモントのコレクションからも、モダンなインテリア空間を豊かにする手法として素材が発信した存在感について知ることができ、さらに新しい感性で発表されるデザインは大変魅力的です。今回その世界観の一部をご紹介する機会を持てたことは大変光栄でした。海外渡航が自由になり、バンコクに行かれた際にはぜひフラッグシップショップにも足をお運びいただきたいと思います。たくさんの素材に出会うことができます。
ラモントの最新情報は、近くリニューアル予定の弊社ウェブサイトとニュース配信にて6月中旬頃からお伝えしていく予定です。是非ご覧ください。


アレキサンダー・ラモント 代理店
エルクリエーション 代表 高田真由美




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バンコクのGaysorn Villageにあるアレキサンダー・ラモント フラッグシップショップ




アレキサンダー・ラモント ウェブサイト(英語)
http://www.alexanderlamont.com


アレキサンダー・ラモント ブログ(英語)
http://blog.alexanderlamont.com


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エルクリエーション株式会社ウェブサイト


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アレキサンダー・ラモント - 素材のストーリー /
シャグリーン、パーチメント、ブロンズ


アール・デコの室内装飾に好まれた素材を扱うアレキサンダー・ラモント。その素材やヒストリーに焦点を当てお伝えしますブログの第3回目です。今回の三つの素材はシャグリーン、パーチメント、ブロンズです。ブロンズ以外は聞き慣れないかもしれませんが、最初にご案内するシャグリーンは、お財布や時計のバンドとして使用される素材でもあります。


1.シャグリーン
20世紀初頭のフランスのデザイナーを魅了した装飾素材の一つがシャグリーンです。アレキサンダー・ラモントの素材のご説明をする時にも、まずはこの素材からスタートする重要な素材で、家具・照明・装飾小物・壁面の表面素材として使用します。無数の細かい粒子により美しく反射する質感を持つこの素材は、英語で「シャグリーン(shagreen)」、フランス語で「ガルーシャ(galuchat)」と呼ばれるエイ皮のことを言います。


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シャグリーンのスキン


実はこのシャグリーン、日本でも歴史的に長く使用されてきた素材です。東南アジアで捕獲されるエイの食用にならない皮部分の最大の輸出先はかつてより日本でした。武士たちが甲冑や刀の柄、印籠などを装飾する素材として使用してきた歴史があり、剣刀で言うと1000年以上まで歴史は遡ります。また、上等でキメの細かいワサビのおろし金として使用される素材というと馴染みがあるのではないでしょうか。シャグリーンのスキンに見られる粒子は象牙や歯と同じカルシウムで、この硬い表面を削る加工には非常に高度な技術が必要です。そのためオーストリッチやクロコダイルと比較される高価な素材として扱われます。


削り方により光沢の出方や質感が変わるのがこの素材の特徴です。私が徳川美術館で見た徳川家の刀の柄には実にたくさんのシャグリーンが使われていましたが、どれもゴツゴツとした迫力ある粒子でした。現在ラモントが家具などに使用する滑らかな手触りではありません。滑り止めとしても使用する刀には隆起した質感が良いのかもしれません。ラモントでは、この素材の艶とパターンがもっとも美しく現れるところまで力を入れて磨きあげ、仕上げていきます。初めてシャグリーンの工房へ行った時に、「作り方の一番の秘密」と言って図解してもらったのは、シャグリーンの美しさが際立つ境がスキンのどこにあるかという説明でした。削りはそこで止めるそうです。シャグリーンの美しさがラモント社の技術と感性から出来上がってきているということがわかります。


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Tourbillon table by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント/ センターテーブル / 素材:シャグリーン、漆、ブロンズ


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海外住宅事例:造作家具のスライディングパネルにシャグリーンを使用。


アレキサンダー・ラモントでは、ルーブル宮にあるパリ装飾芸術美術館においてアール・デコの装飾品の修復を手掛け、シャグリーンについての書籍も執筆するジャン・ペルフェッティーニ氏を美術館から紹介されたことにより、シャグリーンを自社工場で作り始めました。今では代表的素材と成長したシャグリーンですが、商品には環境にも優しいなめしていないエイ皮のみを使用します。そのスキンは強度がより強く、出来上がりが精巧で優しい手触りを持ち、無数の粒子の自然なトーンがとても美しい質感を持っています。それは時間が経つほどに透明感を増し、経年の変化により質感が楽しめる素材です。


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Chop Boxes by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / ボックス(別注) / 素材:シャグリーン、金箔


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Pavé Tables by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / 素材:シャグリーン、卵殻、真鍮
ブログ第2回目でふれた卵殻技法とシャグリーンをテーブルトップに使用




2.パーチメント
アレキサンダー・ラモントで扱うもう一つの"皮"素材が「パーチメント」です。「羊皮紙」というとお分かりいただける、古代から文学や文書の筆写に使われてきた紙に代わる素材です。中世の時代の貴族の時祷書など、顔料や金で美しく彩飾された写本をヨーロッパの美術館でご覧になった方も多いでしょう。20世紀初頭のモダニズムの時代においては、インテリアデザイナー達がニュートラルでありながらラグジュアリーな質感を兼ね備える素材を求めたときに人気があり、椅子やキャビネットに張り込んだり、壁パネルとして多く使用されました。


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アレキサンダー・ラモント / 別注品スツール


パーチメントは、牛皮・羊皮・ヤギ皮を使用した薄い素材です。伸縮性があり、加工段階で削りや磨きをかけ、テンションをかけながら乾燥させることで硬く半透明なスキンとなります。染めと木の基材への張り込みには熟練の技が必要とされます。皮が反って剥がれないような工夫をしたり、曲面に張る時には弾力を調整したり、自然の持つ素材の特性と対話しながら加工を進めていきます。そして出来上がったアイテムには、控えめながら上質で温かな質感があります。


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Largo Coffee Table by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / センターテーブル / 素材:パーチメント、ブロンズ


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Mighty Table | Suji Parchment by Alexander Lamont
絞りのテクニックで染められたアレキサンダー・ラモントの素材


この素材は家具の世界で最近注目度が高くなっているように思います。つい最近も、アントニオ・チッテリオがデザインするパーチメント素材のキャビネットがMAXALTOから発売されていたのをB&B Italiaで拝見しました。アレキサンダー・ラモントでもここ3年間でのパーチメント商材は増えており、1年半前にオープンしたバンコクのフラッグシップショップでは、大々的にパーチメントのイベントを開催しました。その際に羊皮紙を専門とする八木健治氏(羊皮紙工房主宰)をバンコクに招待し、羊皮紙についてのレクチャーをお願いしたとのこと。せっかく日本人である八木氏ですから、羊皮紙とは何かを深掘りできる同様のイベントを、ぜひ日本でも企画したいと考えています。




3.ブロンズ
アール・デコの特徴的な素材ではありませんが、家具の脚や取っ手、ヒンジなどの金物から、装飾の小物までに使用されるラモントで重要な素材の一つが「ブロンズ」です。強度があり、色や形を作るという観点でデザインに自由度のある「ブロンズ」は、造形的素材としてヨーロッパ、アフリカ、アジアのデコラティブ・アートの世界で昔から使われてきました。使用される「ロスト・ワックス・ブロンズ製法」は遡ると6000年前に起源を見ることができ、タイにも関連性がある素材です。というのも仏教徒が大半を占めるタイでは仏像を作るために伝統的にブロンズの技術が受け継がれてきているからです。ラモントでは、アレックスが熟練の技術を持つ仏像の鋳物師とチェンマイで出会って以来、この製法による造形を長年にわたり作り続けてきました。


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Fan Ottoman by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / ラウンドスツール / 素材: ブロンズ、テキスタイル


ロスト・ワックス鋳造の製作では、まず作りたいブロンズそのものの造形モデルをろうで製作します。造形モデルは自由に作って良いので様々な表現が実現できます。モデルが出来上がったらその上を砂や石膏で覆い被し、乾燥させ、熱を加えます。ろうでできたモデルは溶け、菅を通って外に出て行き、中に造形モデルの形の空洞を残します。この時、ろうがなくなるのでロスト(lost)と言います。次に溶解したブロンズを空洞に流し込み、空洞がブロンズで完全に満たされた後に砂は壊され、鋳物ができあがります。さらに磨きや質感の調整、色付けのフィニッシュ工程を加えブロンズの完成です。


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Amaranth Lamp Table | Cracked lacquer by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / サイトテーブル / ブロンズ(脚)、ジェッソ&漆(テーブルトップ)
↑画像をクリックするとAmaranth Lamp Tableの製造方法(ブロンズ)のイメージ動画を見ることができます。動画で製作されているテーブルトップはシャグリーン+金箔です。


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Lost Leaf Vessel by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / 装飾小物 / ブロンズ
ブロンズは、さまざまな質感の表現ができます。


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Hammered Bowl
アレキサンダー・ラモント / 装飾小物 / ブロンズ、金箔
ユネスコの「クラフトエクセレンス」受賞アイテム


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Star & Starlet Vessel by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / 装飾小物 / ブロンズ


ブログの第2回、第3回では、アレキサンダー・ラモントが扱う中心的素材について書かせていただきました。このブランドを扱いはじめてから、「アール・デコ」は日本でとても人気があるのに、その時代の室内装飾デザインや素材についての情報は日本でとても限られていると感じるようになりました。もちろん、アイリーン・グレイはとても人気がありますし、庭園美術館の建築様式がアール・デコの影響を受けていることは誰もが知っていますが、まだまだある奥深いトピックスをラモントを通じてお伝えしていきたいと思っています。次回の最終回では、20周年を迎えたアレキサンダー・ラモントの新作「SIRENA」についてです。


アレキサンダー・ラモント 代理店
エルクリエーション株式会社 代表 高田真由美




アレキサンダー・ラモント ウェブサイト(英語)
http://www.alexanderlamont.com


アレキサンダー・ラモント ブログ(英語)
http://blog.alexanderlamont.com


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エルクリエーション株式会社ウェブサイト


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アレキサンダー・ラモント - 素材のストーリー /
ストロー・マルケタリー、漆、ジェッソ


フレンチ・アール・デコの影響を受ける「アレキサンダー・ラモント 」ですが、その最大の特徴は、1920-30年代の室内装飾で使用された素材にあります。工場はバンコクに近いバングスエというところにあり、ここで100名ほどの職人が手作業で家具、照明、装飾小物、パネル材の制作をしています。中でも最も広いスペースを取って製作されているのはストロー・マルケタリーという技法の素材です。今回はこのストロー・マルケタリーに加え、漆、ジェッソについてのストーリーをお伝えします。


1.ストロー・マルケタリー
ストロー・マルケタリーは、ライ麦の寄せ木細工のことを言います。アシやヨシと同じで中が空洞になった茎を持っており、これを縦にカットして切り開き、リボン状になったライ麦を染め、デザインに応じてベースの素材に張り込んでいきます。


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フランスからラモントの工場へ輸入されたストロー(ライ麦)の茎


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正確に測り丁寧にカットしたライ麦をはめ込んでいきます


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2019年にオープンしたマンダリン・オリエンタル(ドーハ)で使用された別注製作のストロー・マルケタリー


ストロー・マルケタリーはその起源について17世紀頃から資料が残っています。小箱や建築の装飾材料などとして製作されましたが、非常に凝った作り方のためにその後徐々に作られなくなった歴史を持っています。


このストロー・マルケタリーが"再発見"されたのは、1920年代にジャン・ミッシェル・フランクやアンドレ・グルーが室内装飾の素材として使い出した時からです。当時のモダニストたちが、壁面や家具の質感表現にストロー・マルケタリー技法を使ったことで、この技術が見直されるきっかけとなりました。社長のアレックスが触発されたのはまさに彼らのモダンな使い方です。ゴールド調にも見える自然のライ麦が光を捉えた時の美しい陰影に惹かれ、フランス人の技術者から制作技術を学びタイで職人を育て、今ではラモントの中心的な素材となっています。


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ジャン・ミッシェル・フランクがデザインした室内。本棚の奥と扉にストロー・マルケタリーを使用


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Bronze Seine Box by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント/ 装飾小物 / 素材:ストロー・マルケタリー


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物件写真:ヨットの内装に納品するために検品中のストロー・マルケタリー。別注サイズ




2.漆
日本伝統工芸でもある「漆」ですが、ラモントにも漆工房があります。1920年代にパリで活躍したジャン・デュナンやアイリーン・グレイといったデザイナーたちが日本人の漆職人菅原精造氏より伝授され制作した漆作品から影響を受け、かつては東洋の骨董品のディーラーであった社長のアレックスが好んで使う素材です。19世紀後半から20世紀初頭にかけては、日本の工芸品がヨーロッパで人気を博した時代ですが、ヨーロッパで日本人の指導により漆製品が作られていたということはあまり知られていません。社長のアレックスから「菅原氏を知っているか?」と聞かれて以来、日本の漆職人さんに聞いてみても、「そういう人がいたのは聞いたことがある」程度しかわかりませんでした。数年前にジャーナリストの熱田充克さんが「パリの漆職人 菅原精造」という書籍を出版したためにやっとわかったのですが、日本の工芸品を製作する工房で働くためにパリへ渡った菅原氏が、その後アイリーン・グレイと出会い共同で漆作品を制作していたこと、金工デザイナーとして著名なジャン・デュナンへ漆を教えたとのことでした。日本人にほとんど知られていなかったこの人物の教えでアール・デコの著名なデザイナーたちが作品を残したというストーリーが実に興味深いところです。


タイの漆製造について言うと、塗りと乾燥を時間をかけて繰り返すことによって強度が増す漆は、湿度・温度において理想的な気候を有しています。アユタヤ朝の時代(1324-1767年)、タイは漆製造の主要な国でしたが、残念ながら現在では自然漆はほとんど生産されていません。ラモントの工房では自然漆を使い製品を作ります。金箔・シャグリーンといった異なる素材との組み合わせを得意としており、工房で出来上がった製品は、ヨーロッパと日本のクラフツマンシップが非常にうまく融合した独自の表現にも見えます。


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工房で使用される漆の道具と見本サンプル。様々な素材の組み合わせを研究している


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アレキサンダー・ラモント / 別注品のボックス / 素材:シャグリーン、漆
次回のブログでご説明するシャグリーン(エイ皮)に朱赤の漆を7層塗り重ねたボックス


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Ovum Spot Table by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / 素材:卵殻、漆、ブロンズ


英語でエッグシェルと呼ぶ「卵殻漆塗り」は、卵の殻を割って木地に置き、平滑になるまで何層にも漆を塗り重ね研ぎ出していく技法です。漆で白を表現することが難しいので、白い文様を描く時に使われてきた技法で、人間国宝の松田権六や寺井直次など日本の蒔絵の第一人者たちの精緻な工芸品が美術館や骨董店で見ることができます。この技法は、殻を置く配置の技術も必要なので、ラモントの工場でも一部の職人のみが担当します。


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熟練した手技と優れた感性、集中力、忍耐が必要な卵殻の製造工程




3.ジェッソ
最後にご紹介する素材はジェッソです。ジェッソは絵画の下地や建築の模型を作る時に使われる白い石膏です。中世の時代、教会の彫像を飾る顔料や金箔のベース素材として使われたことで知られています。石灰・白顔料・動物性の膠から成る素材で、一般的にはジェッソ自体を最終素材としてはあまり使用しません。アレキサンダー・ラモントではこの象牙のような白い素材の質感が面白いということで、様々な商品に最終素材として使っています。


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Folly Gesso Ceiling Light by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / 照明 / 素材:ジェッソ、真鍮


工房では、ジェッソは原料となる粉と兎膠を混ぜ合わせて手作業で作られます。それに熱を加え何層にも塗り重ね、それぞれの層は磨かれ、完璧に滑らかな素材の層にし、更に様々なハンドフィニッシュを加えて完成させていきます。


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ジェッソの制作風景


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Amaranth Lamp Table by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント/ サイドテーブル/ 素材:ジェッソ、ブロンズ
先端の尖った道具でひび割れた様子を描いたテーブルトップ


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Cracked Lacquer gesso by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモントのテーブルや箱物に使用される素材。
布にジェッソを塗りその上に漆を塗った後、ます目状に割り、割った部分を磨き上げる


一つ一つの素材にストーリーがあるのがラモントの特徴ですが、これら複数の素材を一つの工場で作っているところも珍しいと言われています。異なる素材を混ぜる手法もそのために生まれてくるわけです。


アレキサンダー・ラモント 代理店
エルクリエーション株式会社 代表 高田真由美




アレキサンダー・ラモント ウェブサイト(英語)
http://www.alexanderlamont.com


アレキサンダー・ラモント ブログ(英語)
http://blog.alexanderlamont.com


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エルクリエーション株式会社ウェブサイト


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フレンチ・アール・デコの室内装飾に見る稀有な素材


「アレキサンダー・ラモント」は、家具・装飾小物、パネル材を製作する会社です。弊社エルクリエーションが輸入するこの会社のアイテムは、取り扱いを始めるまではその世界観にあまり馴染みがなくて、どう捉えたら良いかわからないような雰囲気を持っていました。私がこのブランドを扱うきっかけになったのは、知り合いのイタリア人を上海に訪ねたときのことです。彼女がマーケティング戦略を担当する会社について「ちょっと意見を聞かせてくれない?」と言って広げたのが、様々な手法によるラモントの小さな素材サンプルでした。竹に似た寄木細工、細かい粒子を持つスキン、それに日本で伝統的に使われる漆や金箔。何かまとまりがないような気もして、ただどれもが存在感があり、意見を言うというよりも「これは何?」という不思議な気持ちでカタログを持ち帰ってきたのが8年前、ちょうど私が会社を立ち上げた年です。


その素材たちが何かという疑問は、アレキサンダー・ラモントの工場を訪れてからはっきりとまとまりを持った形で見えるようになってきました。バンコクの郊外にある工場を訪れた私を満面の笑みで迎えた社長のアレックスは、私を真っ先に彼のスタジオへ連れて行き、壁一面に並ぶ工芸品や素材に関する書籍の中から何冊かの本を引っ張り出しました。「私はこの時代の素材が好きで、当時のデザイナーたちに影響を受けた物作りをしているんだ」と言って目の前に置いたのは、ジャン・ミッシェル・フランクやアンドレ・グルー、ジャン・デュナンといった名前が表紙に書かれた書籍でした。


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世界中の工芸品や素材の書籍で溢れるアレックスのスタジオと新作のデザインをするアレックス


1920-30年代を中心に活躍したこれらの人々は、フレンチ・アール・デコの時代、凝った工芸技術によるマテリアルで室内を装飾したデザイナー達です。アール・ヌーボーの有機的デザインの時代を経て、次の時代に当たるアール・デコにおいて新たに加わった特徴は、より単純化された直線・幾何学を使ったシンプルなフォルムでした。そこで空間をラグジュアリーにするための手法として注目された一つが「素材」です。ジャン・ミッシェル・フランクは、室内の壁にライ麦の寄せ細工であるストロー・マルケタリーやパーチメント(羊皮)といった素材を使用しました。マイカ(雲母)、シャグリーン(エイ皮)などで室内の装飾品をデザインしたことでも知られています。いずれも生産に手間のかかる凝った素材で、当時の富裕層に人気を博しました。


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ジャン・ミッシェル・フランクがデザインした、調香師ジャン=ピエール・ゲランのための室内装飾
壁面にパーチメント(羊皮)を使用、1930年代


フランス語でガルーシャと呼ばれるシャグリーン(エイ皮)は、刀剣の柄や印籠などに使用されてきた日本では古くからある素材です。ミッシェル・フランクに加え、クレモン・ルソーやアンドレ・グルーといった家具デザイナーが硬くて加工が難しいけれど、象牙のような艶を持つシャグリーンを使い高価なテーブルやキャビネットを製作しました。パリ装飾芸術美術館に収蔵されているグルーの作った美しい曲線によるキャビネットは、アレックスが感嘆したという家具の一つです。高い加工技術と機能性、自然のエイ皮の持つ質感とバランスの良いパターンの並べ方を持ったアイテムで、彼の作品は1925年のパリ万国博覧会でも注目されました。グルーはその時代、モダンと古典の感性を上手く融合させる手法を見せたデザイナーとも言われています。


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パリ装飾芸術美術館所蔵
アンドレ・グルーによるシャグリーン製キャビネット、1925年


またこの時代、ジャン・デュナンやアイリーン・グレイは、漆工芸の手法を日本人の漆芸家である菅原精造から学び、東洋が注目された当時のニーズにも応えました。ジャン・デュナンは、客船ノルマンディー号の室内装飾を依頼され、2つの大戦の間の時代に、フランスとアメリカを行き交う豪華な船旅の室内を凝った素材で飾ったことでも知られています。調べるほどにストーリーに溢れる当時の素材こそが、アレックスが影響を受けたマテリアルだったというわけで、そこからインスピレーションを得て作るアレキサンダー・ラモントのコレクションは、素材に最も特徴のあるものとなっています。


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アイリーン・グレーがデザインした漆塗り屏風スクリーン、1922年


時代がモダニズムに動いた1920-30年代のデザインは、現代のヨーロッパでもとても人気があります。その典型的なエッセンスである放射線や直線、幾何学文様、南洋材・ガラス・クローム、エジプト・アジア・アフリカのエキゾチックな要素など、パリに行くと新たに改装したホテルやレストランで多く見られます。パリ左岸のサン=ジェルマン=デ=プレ近辺にはフレンチ・アール・デコの家具を扱うギャラリーがいくつかあり、小さなシンプルなスツールでも当時のオリジナルアイテムだと100万円程度するものもあり、なかなか高値です。誰が買っていくの?と聞くと「インテリアデザイナーが個人の顧客に紹介するために選ぶことが多い」との答えで、商業空間だけではなく現代の住宅にも広く選ばれるスタイルと想像することができます。


アレックスは、この時代の素材についてを特に研究し、独自の感性でコレクションを作っています。アール・デコの時代にはなかった素材ミックスにも挑戦するアレキサンダー・ラモントの素材のストーリーについては、次回からご案内していく予定です。


エルクリエーション株式会社
代表 高田真由美




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The Amaranth Table by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / サイドテーブル / 素材:ストロー・マルケタリー、ジェッソ、漆


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The Angle Coffee Table by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント/ コーヒーテーブル / 素材:シャグリーン、ブロンズ


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Ledge Console Desk by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント/ ライティングデスク / 素材:シャグリーン、ブロンズ


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Pleiades Vases, limited edition by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント/ 装飾小物 限定品 / 素材:漆、卵殻


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Fourgere Dining Table by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / ダイニングテーブル / 素材:金箔・漆・ブロンズ


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Wishbone Side Table by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント/ サイドテーブル / 素材:パーチメント(羊皮)の絞り染め、ブロンズ


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Flamengo Screen by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / 屏風スクリーン / 素材:ストロー・マルケタリー




アレキサンダー・ラモント ウェブサイト(英語)
http://www.alexanderlamont.com


アレキサンダー・ラモント ブログ(英語)
http://blog.alexanderlamont.com


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「アーネストコラム洒洒落落」第61回目の連載がはじまります。


アーネストとご縁が繋がった方々が、それぞれの視点で自由にテーマを設定し執筆いただく全4回の連載コラム「洒洒落落」。
次回、5月11日(月)より第61回の連載を開始いたします。


今回のゲストはエルクリエーション株式会社 代表 高田真由美さんです。テキスタイルを中心に厳選された海外ブランドのプロダクトを提供するだけでなく、セミナーを開催するなど幅広く活躍されている高田さんに現在、世界のラグジュアリーシーンで注目を集めるブランド「アレキサンダー・ラモント」についてお話していただきます。


*** プロフィール ***


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高田 真由美
MAYUMI TAKATA


経歴
東京女子大学卒業、言語学専攻
法律事務所勤務ののち、マナトレーディング株式会社企画室チーフとして12年勤務。
商品企画とブランドマーケティングを担当。海外展示会やメーカーを数多く訪問する。
2013年、エルクリエーション株式会社を設立し、現在に至る。




エルクリエーション株式会社


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エルクリエーションは、インテリア空間における素材や情報を提供する会社です。ブログで今回ご紹介予定のアレキサンダー・ラモントのほか、ロロ・ピアーナ・インテリアなどいずれも素材にこだわりがあり、その背景に魅力的なストーリーを持つブランドを展開しています。
インテリア商材の販売に加え、マーケティングやデザインのコンサルティング、海外トレンド情報をセミナーや雑誌で発信するなどユニークな業態を取ることにより、会社名にあるAILES(=フランス語で翼)の通り、まだ知られていない情報・新しい情報を提供することで海外と日本を繋げる会社です。




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