第一回│プロローグ
2013.11.5
インテリア
中島洋子
Vibel
「プロローグ」
今週より、4回にわたりブログを担当させていただきます、
Vibel(ヴィベル)の中島です。
Vibelは、1978年にフランスで創業した、子ども部屋専門のインテリアデザインショップ。2003年に南青山にアジア初のVibelフランチャイズショップをオープンし、メインとなる商品『オーダーメードの子ども部屋』をデザインして早10年が経ちました。
アーネストホームさん設計のお客様のお宅にも子ども部屋のご提案をさせていただいており、今回こちらのブログのお話をいただいて、私がVibelの仕事に携わったこの10年間で感じた子ども部屋づくりの様々な考え方を、文章にするよい機会を頂いたと嬉しく思っております。4回にわたる連載、どうぞ楽しんでいただけると幸いです。
私のプロフィールを見ていただいておわかりのように、私はもともとメディア業界の出身で、Vibelというブランドに惚れ込んで、そのためにインテリアの勉強をしたという、変わった経歴の持ち主です。
10年勤めたテレビ局を辞めて私が留学をした1998年―2001年頃のフランスは、少子化対策が功を奏して、EUトップの出生率に躍進した頃でした。フランスの大学院でMBAを修めた私は、日本とフランスの子育てをめぐる環境の違いに刺激を受け、子どもを産み育てることに希望を持てるようなビジネスで起業したいと考えるようになりました。そして、その頃の日本に一番欠けていたのが、子ども部屋のインテリアだったのです。
色鮮やかなVibelの商品に魅かれて、「おもちゃ箱とかネットで販売できないかな?」という気持ちで本社とコンタクトを取ったのですが、Vibelのコンセプトの核となるのは、「家具」という商品ではなく、一人一人の子どもとその家庭環境にあわせた、理想的な子ども部屋の空間=『オーダーメードの子ども部屋』をデザインすることだと知り、MBAを取ったばかりだというのに今度はインテリアの勉強をし、Vibelをオープンしたというわけです。
「Vibelのデザイナーになれる人は、独立して事務所が構えられるくらいのデザイナーでなければ難しい」と、開業時に多大なサポートをしてくれた建築士の姉夫婦にはよく言われたものですが、Vibelのデザイナーをする上で、私が建築・インテリア業界の出身でなかったことがかえってよかったかな、と思う点も少なくありません。
『オーダーメード』というサービスは、日本人ではまだなじみが薄いのでしょうか。
Vibelのオープニング研修で、顧客のニーズを引き出すには、できるだけ「Yes」「No」では答えられない、オープンクエスチョンで情報を聞き出すように教えられたものですが、「あなたのお子さんはどんなお子さんですか?」「理想的な子ども部屋はどんな空間ですか?」と尋ねて、自身の考えを話してくれる日本人はとても少ないのが実情です。
「AかBかCか、いくつかのパターンを見せてもらって、その中でどれがいいかを選ぶことはできるけれど、何もないところから想像することができない」というのが一般的な日本人の考え方なのではないでしょうか。
その一方、日本に住む外国人のお客様や、お子さんをインターナショナルスクールに通わせているお客様は、先ほど述べたようなオープンクエスチョンに対して、非常に理路整然とした自分の考えを話してくださいます。それも、100聞きたいところ、200の答えが返ってくるようなイメージです。
この違いがどこからくるのかな?と、よく聞いてみるのですが、欧米では、保育園でも幼稚園でも学校でも、子どもが入学入園するたびに「どんなお子さんですか?」「どのような家庭教育のポリシーをお持ちですか?」「こんなときご両親はどんな対応をされますか?」ということを毎回イヤというほど聞かれるらしいのです。それだけ、学校側も子どもの個性にあわせた対応をしてくれている、ということなのでしょう。
ですから、この文化的な違いを乗り越えて、「質問攻め」に慣れていない日本人のお客様からどうやって話を聞きだすか、という点においては、ジャーナリスト時代の「聞く技術」というものが、大いに役立っていると思っています。
新しく入ってきたデザイナーさんに「どうして中島さんはほぼ初対面の人にそんなにズケズケ質問ができるのですか?」と言われますが(笑)、「聞く技術」とは、すなわち「この人になら話してもいいかな」と思わせることで、つまりは人間として信頼してもらえるかどうかの「人間力」の勝負なのかな、と思います。
建築やインテリアの世界というのは、その世界での知識だけでなく、私のようにいろいろな「寄り道」をして入ってくるのも、悪くないのかな、というのがこの10年を通しての私の感想です。
と、前置きが大変長くなってしまいましたが、次回のテーマは「子ども部屋の考え方」について、お話を始めたいと思います。