最終回│左官職人の仕事のある風景
2015.8.2
エクステリア
鈴木光
日本左官業組合連合会
左官職人の仕事のある風景
最終回は各地の左官工法が見られる建物を紹介します。夏休みの旅行の際、参考にしてみてください。お近くに訪れた際は、ぜひ、素晴らしい職人技をご覧頂ければと思います。
北海道
北海道の小樽市にある木骨鉄網コンクリート造りの「旧後藤商店(大正9年)」。小樽の全盛期に呉服商だった塚本商会小樽支店として建てられたもので、鉄筋コンクリート時代に移行する直前の建築物です。鐵網混凝土・力骨と金網の下にモルタルを塗り、木骨鐵網混凝土構造としています。
山形県
山形県銀山温泉能登屋旅館。左官職人の後藤市蔵氏(昭和7年作)の名乗りの看板は、創業時の当主の名前だそうです。
新潟県
新潟県長岡市にあるサフラン酒造の看板土蔵、川上伊吉の名乗りの「左伊」。サフラン酒の初代・吉澤仁太郎が築いたものです。「鏝絵(こてえ)」という漆喰のレリーフをちりばめた蔵は、十二支をはじめとする17種の動物・霊獣・九種の植物が極彩色に描かれています。
東京都
「日本橋」麒麟以外の装飾は熊木三次郎氏が受け持ちました。
東京都
聖徳記念絵画館では、藤井平太郎氏が手掛けた中央大広間天井ドーム、「蝙蝠(こうもり)天井」の装飾。
神奈川県
日本で初めての本格的なリゾートホテルとして開業した神奈川県箱根町宮ノ下の箱根富士ホテルには、荒木亀吉作「唐破風(からはふ)の鶴」をご覧いただけます。
静岡県
静岡県松崎の重要文化財岩科学校にある欄間に施された入江長八氏の「千羽鶴」。左官技法と色彩技法を巧みに融合させた傑作。
静岡県
伊豆松崎の長八美術館は日本で唯一の漆喰芸術の美術館にある、手塚忠四郎作「天女の舞」。
島根県
島根県太田市西性寺にある松浦栄吉作「鳳凰(ほうおう)」は松浦栄吉氏が還暦を迎えた、大正時代中ごろの作品です。
高知県
土佐漆喰仕上げの高知県安芸市の民家。土佐漆喰は一般の漆喰と異なり、糊を混入しないため水に強く、厚塗りができる。施工後は、白色に変化していきます。
沖縄県
沖縄でも珍しい島瓦の屑瓦と沖縄漆喰のムチでつくられた魔除け用シーサー。その名の通り沖縄地方で作られ、使われてきた漆喰です。独特の製法、その姿から島言葉ではムチと呼ばれます。
こちらで取り上げたのはほんの一例です。
全国各地にまだまだ、素晴らしい作品が残されています。夏休みの旅行や里帰りの際、訪れてみてはいかがでしょうか。また、東京にも多くの作品が残されています。ぜひ、その素晴らしさを実際にご体感いただけたら幸いです。