現代人のニーズを叶えるモダン建築とは? 主な特徴や代表的なモダン建築を紹介
2025.6.26
注文住宅のデザイン
Earnest architects

住宅の建築スタイルは多岐にわたりますが、近年は現代人の価値観やライフスタイルに適したモダン建築に注目が集まっています。和モダン住宅やシンプルモダン住宅などがその代表格ですが、「そもそもモダン建築ってどういうもの?」「どのようなデザインならモダン建築といえるの?」など、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、モダン建築の定義や歴史、主な特徴などをまとめました。モダン建築について詳しく知りたい方や、モダン住宅の建築を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
モダン建築(モダニズム建築)とは? 基本的な定義を解説
モダン建築(モダニズム建築)とは、実用性や機能性を重視した建築様式のことで、別名「近代建築」とも呼ばれます。
装飾をできるだけ省き、鉄やガラス、コンクリートといった機能的な素材を使い、シンプルかつ合理的に仕上げている点が特徴です。外観はシャープな水平・垂直のラインを採用したものが多く、スタイリッシュな佇まいを好む方々に人気があります。シンプルだからこそ他の建築スタイルとの相性も良く、和の要素を取り入れた「和モダン」や、自然素材を用いた「ナチュラルモダン」、高級感を演出する「ラグジュアリーモダン」など、多様なスタイルが確立されています。
コンテンポラリー建築との違い
コンテンポラリー(contemporary)とは、英語で「現代の」「同時代的な」という意味を持つ言葉で、日本語では「現代建築」とも呼ばれることもある建築様式です。その名の通り、現代の社会やテクノロジーに応じて“今風”を追求するスタイルで、トレンド性の高い住まいを実現します。
例えば近年なら、IoTやセンサーを活用したスマートハウス、太陽光発電や地熱発電などの再生可能エネルギーを活したサステナブル住宅などが該当します。
機能性を重視するモダン建築でも現代技術を取り入れるケースが多いため、両者は混同されがちです。しかし、モダン建築はあくまで合理性や機能美を追求するのに対し、コンテンポラリー建築は“今”の価値観やライフスタイルを反映させることを重視している点に違いがあります。
モダン建築の歴史と発展した背景
モダン建築が誕生した背景には、17世紀の市民革命や、18世紀中頃から19世紀初頭にかけて起こった産業革命の影響があります。これらの社会的変革により、大衆社会と工業化が進み、鉄骨造や鉄筋コンクリート造などの新しい構造が採用されるようになり、建築様式も大きな転換期を迎えました。
さらにガラスの大量生産が可能になったことで、それまで主流だった石やレンガに代わる建材として用いられるようになったのも、大きなターニングポイントになっています。採光性や開放感を重視したデザインを実現できるようになり、建築の表現が大きく広がりました。
思想の面でも、合理性や機能性が重視されるようになり、建物の本来の機能と関わりのない装飾は極力省かれるようになっていきます。
モダン建築の主な特徴
モダン建築の住宅における主な特徴は大きく分けて4つあります。ここからはそれぞれの詳細をご紹介します。
1. 無駄をなくしたシンプルなデザイン

モダン建築は合理性や機能性を重視しているため、無駄をそぎ落としたシンプルなデザインが基本となります。
外観や空間のフォルムも凹凸は少なく、直線的なラインや大胆な曲線で構成されていることが多く、統一感のある美しさが魅力です。余計な装飾を排したデザインはすっきりとしており、長く住み続けても飽きがこない、時代を超えて愛されるデザインです。
2. モノトーン配色が主流

モダン建築では、モノトーンを基調とした配色が主流です。シンプルなフォルムやデザインを生かすために、落ち着きのあるベーシックな色合いが好まれます。中でも人気が高いのは、白や黒、グレーなどですが、ベージュやアイボリー、グレージュやチャコールグレーなどのニュアンスカラーを取り入れた事例も多く見られます。
一方で、個性を演出するために、窓枠や軒裏などの一部にカラフルなアクセントを加えるケースもあります。例えば、外壁を白でまとめ、窓枠に赤やブルーを配色することで、遊び心のある外観に仕上がります。
装飾の少ないミニマルデザイン

ミニマルデザインとは、装飾を極力抑え、無駄を省いたシンプルなデザインスタイルを指します。
外観は直線的なフォルムを基本とし、凹凸を抑えた端正な佇まいが特徴です。内装も間仕切りを少なくすることで、すっきりとした開放感のある空間を生み出します。
一見すると殺風景に感じられるかもしれませんが、間取りや設計にこだわり、高級感のある家具やインテリアを適所に配置することで、洗練された上品な住まいを実現できます。
4. 無機質な素材を用いた 建築

従来の住宅では木材やレンガが多く使われてきましたが、モダン建築では鉄やコンクリート、ガラスといった無機質な素材を積極的に採用します。なかでも鉄やコンクリートは耐久性が高く、堅牢で長寿命な住まいを実現します。また、壁一面をガラス張りにしたり、階段にガラスを用いたりと、窓以外の部分にもガラスを多用する点もモダン建築の特徴のひとつです。
こうした硬質な素材は、全体にシャープで洗練された印象を与えます。無駄のない美しさを求める方や、都会的な雰囲気の住宅が好みの方にモダン建築はおすすめのスタイルです。
モダン建築の屋根・壁・窓のデザイン
モダン建築のデザインにはさまざまなスタイルがありますが、ここでは、主なポイント別に、モダン住宅のデザイン例をご紹介します。
屋根のデザイン
モダン建築はシンプルかつシャープなフォルムを特徴としているため、屋根材も凹凸や軒の少ないすっきりとしたスタイルが適しています。
具体的には、一方向に傾斜する片流れ屋根、建物の両側に向かって傾斜する切妻屋根、水平もしくはほとんど傾斜のない陸屋根(フラットルーフ)などが、相性が良い傾向にあります。
特に片流れ屋根や切妻屋根を採用する場合は、勾配を強くしすぎず、緩やかな傾斜(緩勾配)にすることでデザイン性の高いモダンな印象に仕上げることができます。
壁のデザイン
モダン建築の壁には、コンクリート打ち放しなど、硬質で無機質な素材を用いるのが特徴です。縦または横のラインを強調したデザインや、柄のないフラットな仕上げを選ぶことで、モダンらしい外観に仕上がります。
外観にメリハリを付けたい場合は質感の異なる素材を組み合わせたり、一部を木目調に仕上げるのも効果的です。和モダン建築の場合は、竹や木の格子をあしらうことで、伝統的な趣のあるモダン住宅に仕上がります。
窓のデザイン
モダン建築は、外観に無駄な装飾がないシンプルな外観が特徴のため、窓のデザインが外観全体に与える影響が大きくなります。外観の形状に合わせた特注品(オーダーメイドサッシ)はもちろん、自由設計であれば既製サッシであっても、大きさ・形・デザインを吟味することで、住まい全体と調和した、オーダーメイドのような仕上がりが可能です。
スクエア型のフォルムを基本とするモダン建築では、細長いスリット窓との相性が良く、スタイリッシュな印象を引き立てます。窓の配置は部屋の間取りにもよりますが、複数設ける場合は上下左右のラインをそろえて設計すると、統一感のある美しいファサードを演出できます。
間取り
モダン建築の間取りは、外観と同様に凹凸の少ないシンプルな設計と、開放感を重視する点が特徴です。具体的には、間仕切りをできるだけ省き、リビングやエントランスに吹き抜け空間を設けることで、広がりのある空間が生まれます。
また、収納スペースを十分に確保することも重要です。収納に余裕があれば物が表に出にくく、モダン建築ならではの「機能美」がより引き立ちます。扉付きの収納なら雑然としがちな収納内部を隠すことができ、生活感を抑えながら、上質でラグジュアリーな空間を演出できます。
代表的なモダン建築
「モダン建築のイメージがなかなか湧かない」という方は、国内外で代表的なモダン建築をチェックしてみるのもおすすめです。デザインの特徴や全体的な雰囲気をつかみやすくなり、自分の理想とする外観や内装の方向性が明確になります。
ここでは、代表的なモダン建築を3つご紹介します。
サヴォア邸
出典:ウィキペディア_サヴォア邸

サヴォア邸は、フランス・パリ郊外の街、ポワシーに建てられたモダン建築の住宅です。建築家ル・コルビュジエが建築し、「近代建築の五原則」とされるピロティ・屋上庭園・自由な平面、水平連続窓・自由なファサードのすべてを取り入れた名作として知られています。
外観は白の長方形、1階部分には玄関やエントランスが設けられ、居住空間となる二階部分は細い柱で支えられたピロティになっています。2階には複数の窓が水平に連続して設けられており、どの部屋からでも外の景色を楽しめ、自然光をたっぷりと取り入れることができます。
ファンズワース邸
出典:ウィキペディア_ファーンズワース邸

ファンズワース邸は、ドイツ出身の建築家ミース・ファン・デル・ローエが手掛けたアメリカ・シカゴ郊外に建つモダン建築の名作です。
ミース最後の住宅作品とされるファンズワース邸は、天井・床・柱のみで構成されたワンルーム住宅です。四方はガラスで覆われており、必要最小限の意匠が開放的な住空間を作り上げています。構造体はいずれも真っ白で、水平方向に強調されたシンプルなラインは、周囲の緑と美しく調和しています。
内装にはミースが提唱した「ユニバーサル・スペース」の概念が採用されており、横に長い広々とした空間がひとつだけ。キッチンや浴室、トイレ、収納などは緩やかにゾーニングされているものの、一体感のある大胆なデザイン・レイアウトが印象的です。
前川國男邸
出典:ウィキペディア_前川國男邸

前川國男邸は、日本モダニズム建築の第一人者として知られる建築家・前川國男が自らの住まいとして設計した、和モダン住宅。もともとは東京都品川区上大崎に建てられましたが、現在は「江戸東京たてもの園」に移築され、一般公開されています。モダン建築は鉄やコンクリートを用いるのが基本ですが、前川國男邸はあえて木造建築を採用している点が大きな特徴です。
5寸勾配の切妻屋根の下は、中央のサロンを挟んで両側に小部屋が配置されたシンメトリーな構成が広がります。サロンには大きな開口部と開放感のある吹き抜けが設けられており、南北のガラス戸を開け放つと、通気性に優れたピロティとしての機能を果たし、太陽光や風などの自然を身近に感じられます。さらに、幾何学的な格子窓や灯り障子といった和の意匠が随所に取り入れられている点も魅力のひとつです。
アーネストアーキテクツのモダン建築事例
アーネストアーキテクツは高級注文住宅専門の建築設計事務所として、これまで多数のモダン建築の設計を手掛けています。ここからは、アーネストアーキテクツが設計したモダン建築の住宅の実例を3つピックアップしてご紹介します。
プライバシーを守る箱


モダン建築の基本であるスクエアの外観が印象的で、立体感のあるモダン住宅です。
縦に長いスリット窓が箱形の外観とマッチし、シャープでまとまりのあるデザインになっています。LDKは間仕切りが少なく開放的でありながら、外からの視線が気にならないレイアウトになっており、住宅街の中であってもしっかりプライバシーを保護できます。
心惹かれる家


シャープな印象の外壁を、木端積み仕上げの曲線が印象的な外構が包みこむ外観。セキュリティ性が高く威圧感を与えやすい外に閉じたデザインに、柔らかさを添えた住まいは、帰宅した家族や訪れたゲストを優しく出迎える、安らぎを感じるデザインです。
エントランス正面には、流れるような螺旋階段。その先には、二層吹き抜けの開放的なリビングダイニングが広がります。フラットにつながるテラスからは、水盤と青々とした庭の景色を楽しめる、健やかな暮らしを叶えました。
優しい光が満ちる家


シックなモノトーンのツートンカラーに、ぬくもりのある木材を組み合わせた外観が魅力的な和モダン住宅です。
異なる素材、カラーを組み合わせることで、メリハリのある見た目に仕上がっています。室内も外観と同じく、白と黒、木材をバランス良く採り入れており、スタイリッシュでありながらどこか暖かみも感じる空間に仕上がっています。
モダン建築は無駄を省いた機能美が魅力
モダン建築は、装飾を極力省き、シンプルかつ機能的な設計を採用しているのが特徴です。鉄やコンクリート、ガラスといった無機質な素材を用いることで、シャープでスタイリッシュな外観・内装が実現します。室内は無駄を省いたことですっきりと開放的な空間になるため、「生活感のないおしゃれ空間で過ごしたい」というニーズを叶えられます。なお、モダン建築にはナチュラルモダンや和モダンなどさまざまなスタイルがあるため、プロと相談しながら自分らしい住まいをデザインするのがおすすめです。
アーネストアーキテクツではお客さまのニーズや要望を丁寧にヒアリングした上で、コンセプトデザイナーやディレクトデザイナー、インテリアコーディネーター、クラフトデザイナーといった各分野のプロフェッショナルが一丸となって理想のモダン住宅をトータルプロデュースいたします。
これまで培った技術力と独自の設計スタイルにより、実用性とオリジナリティを兼ね備えた理想の住まいをかたちにします。モダン建築に興味のある方や注文住宅をご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。