都心に建つ居城

土地の購入にあたり、希望の建物が建つか相談を受けた。北側、西側は高い建物が建っており、眺望としては南方向を重視するが、南側の建物も3階となっているが塔屋があるため実質は4階建てと考えた方がよく、5階以上から眺望を楽しむことができると伝えたところ、土地の購入を決めたオーナー。希望は「外部からは内部の様子がわからない、セキュリティー性の高い住まい」。土地柄に合わせ、外観は重厚感のある天然石を用いて街並みに合わた。CGでは1階部分の石の仕上げが完成時はより堅牢な印象を与えるコブ出しに変更されている。

地下1階は2階のタイニングから水が伝い、1階を通り抜けて地階の滝壺に水がたまり、小川になってせせらぐ水の演出を施した和の空間。エレベーターホールから小川を渡りたどり着く演出で、奥には寿司職人専用のカウンター設え、ケータリングを楽しむ空間とした。囲炉裏と和室もあり、ホームパーティー会場としても使用できる。

周囲にマンションやオフィスビルが建ち並ぶためハイサイドライトと薪暖炉の対面にあるテラスから採光を得たリビングは、プライバシーを守りながらも、明るい空間を叶えた都市型住宅。都市部に建つ住宅では珍しい、薪暖炉を空間のポイントとしてレイアウトしている。

ダイニングキッチンは開口をフルオープンにすることでテラスとひと続きの空間にできる。アイランド型のキッチンカウンターにはプロ仕様の鉄板があり、こちらもシェフを呼んでケータリングが楽しめる。ダイニングキッチンやリビングに隣接したテラスは、全面を壁面緑化しているため、光と共に緑も提供する。夜は間接照明によりライトアップされ、屋外用のキッチンも完備しているため、アウトドアリビングとしても昼夜ともに使用できる。

最上階のスパ。CGはスパにある露天風呂を描いたもの。住宅地と商業地域の狭間に建ち、この露天風呂は住宅地に向かって眺望を確保したため、都心とは思えない抜群の眺望を叶えている。CGと完成時は岩風呂のつくりがやや異なるだけで、ほぼ変わらない仕上がり。都心の住まいの屋上にあるとは思えない温泉旅館のような空間を叶えている。