2018.9.3

オーナーズ

菅沼信也

医療法人社団菅沼会

人工透析について

春になると、第一透析室の窓からは隣の公園に咲く桜並木が一望できます。

人工透析(多くは維持透析)は、何らかの理由により腎臓の機能(腎機能)が低下し慢性腎不全になってしまった患者様に対する内分泌機能以外の腎機能の代替療法(腎代替療法)です。施設で行う場合は、週3回、1回につき4〜6時間の透析を行うのが一般的です。

腎臓は、尿を生成して体内の老廃物や毒素を排出する働きのほか、水分や電解質のバランスを整えたり、血圧調整やビタミンDを作って骨を丈夫にしたり、赤血球をつくるなど様々な働きをしています。ひとたび慢性腎不全となると、残念ながら多くの場合回復は見込めません。食事や薬による治療で進行を遅らせる治療を行うのですが、末期腎不全に至ると意識障害や呼吸困難といった尿毒症の症状が現れ、放置した場合は最悪死に至ることもあります。

完全個室内で行ったTV撮影の様子。完全個室では透析中に携帯電話での通話もできるので、お仕事がお忙しい方にとても喜ばれています。

そこで、腎機能がかなり低下してしまった末期腎不全の患者様は、【腎臓移植(腎移植)】か【人工透析】を選択することになります。人生を決める療法選択はとても重要です。当院では、透析導入前の患者様はCKD(慢性腎臓病)外来にて、生活指導、栄養(食事)指導及び投薬を継続して行うとともに、十分患者様に納得していただいた上で腎代替療法選択をしてもらうよう努めています。

人工透析は、大きく分けると、病院やクリニックなどの医療機関で行う「施設透析」と、患者さんの自宅でご自分の手で行う「在宅透析」の2つに分類されます。

また、透析方法としては、体外に血液を引き出し、透析器(血液浄化器)の中に循環させて老廃物や余分な水分を取り去って、綺麗な血液をまた体内に戻す「血液透析」、お腹の中(腹腔内)に透析液を入れて、血液からの老廃物や余分な水分などを、腹膜を介して透析液にうつす「腹膜透析」の2つに分けることができます。腎内科クリニック世田谷では、55床の透析ベッドを配置し、腎移植を除く下記画像内の腎代替療法の全てに対応しています。

慢性腎不全の場合、老廃物等が体内に蓄積することにより、様々な合併症が起こります。それらの蓄積を抑えるべく、多くの透析施設では厳しい食事制限を行うのですが、当院は「栄養状態の良い筋肉量の多い透析量の多い透析患者様のほうが長寿」という統計結果に基づいて、よく食べ・よく歩いていただき、必要に応じて透析量(血液流量や時間)を増やしながら薬剤を使用したりして、血液検査結果をコントロールしていきます。「透析時間が長くなるなんて辛い!」と仰る患者様もいますが、実際は透析時間が長い方がむくみは取れ体が軽くなり、血圧コントロールや貧血が改善されて楽になります。透析中に下肢エルゴメータによる運動を行っている患者様もいらっしゃいます。

こうした取り組みにより、当院の患者様は栄養状態が良好で筋肉量も多いため、生存率が全国平均より高くなっています。透析歴が46年目の方を含め40年を超える方も3名いらっしゃいます。治療の結果得られた様々なデータは、患者様了承の下、積極的に学会等で発表を行うことで、業界の発展にも尽力しています。お陰様で講演の依頼を頂くことも多く、最近では光栄にも中国やシンガポールでお話する機会をいただきました。

維持透析は継続治療が必要です。災害時に備え患者様には災害時対応マニュアル(左)と、どの施設でも透析を受けられるよう、現在の透析条件を記載したカード(右)をお渡ししています。自家発電装置も完備しています。

穿刺(血流を確保するために針を刺すこと)が難しい血管には、ポータブル超音波装置(エコー)を使用します。
狭くなってしまった血管を拡張する手術(PTA:経皮的血管形成術)も当院内で行っています。

先述の通り、施設透析は、週3回、1回につき4〜6時間の透析を行うのが一般的です。しかし、日中の多くの時間を拘束されてしまいます。そのため、当院では患者様の生活スタイルに合わせ、月・水・金は夜10時過ぎまでの準夜間帯、および金曜夜から土曜朝までオーバーナイト8時間透析を行っています。夜間の透析はスタッフの確保が厳しいのですが、医師・看護師・臨床工学技士が必ず滞在し治療にあたっています。

次回はオーバーナイト透析についてお伝えします。

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