2020.6.1

インテリア

高田真由美

ailes creation

アレキサンダー・ラモント 2020新作コレクション"Sirena"

フレンチ・アール・デコに触発されたアレキサンダー・ラモントの素材をご紹介する4回シリーズですが、早くも最終回です。
アレキサンダー・ラモントは、今年設立20年の記念の年を迎え、本来であれば3月末にバンコクのフラッグシップショップで各国のディストリビューターや顧客を招いてのイベントを開催予定でした。私も渡航を楽しみにしていたのですが、新型コロナウィルスの影響で中止となってしまいとても残念です。今回イベントで発表する予定だったコレクションが「SIRENA(シレーナ)」というアフリカがテーマのコレクションです。アフリカ芸術は、アール・デコの時代においても芸術家や建築家に大きな影響を与え、どっしりとした家具や、アフリカのパターンなど、アフリカの影響を受けたスタイルが当時の室内装飾に使われました。

ラモントの創業者アレックスはイギリス人ですが、実はご両親のお仕事の関係で幼い頃をアフリカ・ケニヤのヴィレッジで過ごした経歴を持っています。

ケニアが植民支配から独立して6年後の1969年、アレックスは母とケニアに到着。父親の仕事の関係で、アレックスは世界の様々な工芸品に触れ育つ経験をしました。

アフリカでの経験が自分に影響を与えているというアレックスですが、その思い出が「SIRENA」コレクションには織り込まれています。線、形、質感を通じて表現される象徴的なアフリカのエッセンスが、ブラジル出身デザイナー、アントニオ・ダ・モッタとのコラボレーションにより力強くデザインされました。

Eshú Coffee Table by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / センターテーブル / 素材:ストロー・マルケタリー、ブロンズ

ロストワックスブロンズ製法で鋳造された荒々しい質感の脚が、動的なテーブルトップを支えています。その天板は5色のコーラルカラーで染めたストローが寄木されたものです。ナイジェリアのヨルバ族の持つ力と信念に対する考え方にインスピレーションを受けたデザインです。

Shangó Floor Lamp by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / フロアスタンド / 素材:オニキス、ブロンズ

琥珀色のオニキスをカットし、ブロンズの柱にアクセントとして加えたフロアランプ。シャンゴとは、ヨルバ族に伝わる神で、雷と嵐を司り、その象徴は両刃の斧とされています。

Yemanyá Wall Sconce by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / 壁掛け照明 / 素材:ブロンズ、金箔

ブロンズ製の黒のナツメグを金箔の光で後から照らします。イエマーニャは、アフリカやブラジルで、海の創造にかかわる女神の意味があります。

アール・デコ時代の装飾の特徴は、モダンなスタイル、クラフツマンシップ、稀有で豊かな素材の使用などが挙げられますが、「SIRENA」コレクションにも様々な工芸的手法をモダンに見せたアイテムが発表されています。

Fourgere Dining Table by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / ダイニングテーブル / 素材:シャグリーン、ブロンズ
Cupola Ceiling by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / シーリングライト / 素材:卵殻、ブロンズ、金箔

シャグリーン(エイ皮)をテーブルトップに使用したダイニングテーブルの上には、卵殻による漆塗り手法の照明が設置されています。内側に加工した金箔の光が叙情的な輪となって詩的に床面に広がります。

第2回のブログでお伝えした卵殻漆が使用された照明外側の加工。

アール・デコのデザインでは「鮮やかな色彩」も特徴的であり、当時バレエリュスの舞台を彩ったレオン・バクストのセットデザイン、アンリ・マティスに代表されるような初期のフォービズム、ファッションデザイナーであるポール・ポワレの作品などに美しいカラーが見られます。2020年ラモントの「SIRENA」コレクションでも、「カラー」を一つの特徴として紹介したアイテムがあります。いずれもラモントが得意とする素材によるものです。

Lapis Side Tables by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / サイドテーブル / 素材:漆、ブロンズ

シグニチャーマテリアルでもあるライ麦で原型をとったブロンズの脚を持つサイドテーブル。トップには、半貴石のブルーの色調によるカボション(半球型)をセッティングし、塗装をかけることで強度を高めています。

Volta Mirror by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / ミラー / ストロー・マルケタリー、真ちゅう

自然を感じさせる色のスペクトルが、ひとつひとつ厳選しながら手で選ばれたライ麦によって生き生きと表現され、陰影の効果が美しいエレガントなミラー。

Plume Floor Lamp by Alexander Lamont
アレキサンダー・ラモント / フロアランプ / 素材:ストロー・マルケタリー、ブロンズ

黒檀色から淡い色までをライ麦に手染めし、グラデーションで寄木加工。濃淡のスモーキーなトーンが美しいストロー・マルケタリーの照明スタンドです。ベースにはブロンズが使用されています。

2020年SIRENAは、アフリカの力強い造形、モダンな洗練されたスタイルが際立ち、特に美しい「青」やシックな「黒檀・琥珀・珊瑚」のカラーが揃いました。上記にご紹介したのは中心的なアイテムですが、以下のムービーではアレックスがコンセプトを語り、さらに全体がご覧いただけます。


↑画像をクリックすると「SIRENA」コレクションのムービー(4:40)をご覧いただけます。
*右下のCCから日本語の字幕が選べます。

今回4回にわたりアレキサンダー・ラモントで使用される素材は何を背景としているのかについて書かせていただきました。聞き慣れない素材もあったと思いますが、アール・デコの素材、例えばストロー・マルケタリーやパーチメントはいくつかのヨーロッパ家具ブランドでも取り扱いがあります。エルメスメゾンからはジャン・ミッシェル・フランクの復刻版が発売されており、アルマーニカーサでもストロー・マルケタリーの家具を見たことがあります。いずれもモダンな表現と素材へのこだわりを持つブランドが扱っており、アール・デコのマテリアルやデザインは、ヨーロッパの人々にとっても憧れのスタイルなのだとわかります。
アレキサンダー・ラモントのコレクションからも、モダンなインテリア空間を豊かにする手法として素材が発信した存在感について知ることができ、さらに新しい感性で発表されるデザインは大変魅力的です。今回その世界観の一部をご紹介する機会を持てたことは大変光栄でした。海外渡航が自由になり、バンコクに行かれた際にはぜひフラッグシップショップにも足をお運びいただきたいと思います。たくさんの素材に出会うことができます。
ラモントの最新情報は、近くリニューアル予定の弊社ウェブサイトとニュース配信にて6月中旬頃からお伝えしていく予定です。是非ご覧ください。

アレキサンダー・ラモント 代理店
エルクリエーション 代表 高田真由美

バンコクのGaysorn Villageにあるアレキサンダー・ラモント フラッグシップショップ

アレキサンダー・ラモント ウェブサイト(英語)
http://www.alexanderlamont.com


アレキサンダー・ラモント ブログ(英語)
http://blog.alexanderlamont.com


エルクリエーション株式会社ウェブサイト