第三回│等身大の大塚家具~これまでの50年、これからの50年~Vol.3
2018.6.18
インテリア
大塚久美子
大塚家具
等身大の大塚家具~これまでの50年、これからの50年~Vol.3
大塚家具の発祥は、総桐箪笥の工房です。職人だった私の祖父が90年前、1928年に箪笥の町である埼玉県春日部市に工房を構えたのが最初です。そのおよそ40年後、1969年に販売専門の会社として設立されたのが大塚家具です。
当時、職人が作った家具は複雑な流通過程で消費者に届くまでに価格が何倍にもなってしまっていましたが、東京から近い産地であった春日部では、職人が作った箪笥を直接消費者に売ることが一般的でした。職人が作った良いものを、直接消費者に届けることで、価格も安く、商品の情報も届けることができます。
この方法で、日本中の産地、世界中の作り手から日本の消費者に商品を届けるネットワークを広げ続け、今では、国内263社、海外154社の製造事業者のネットワークとなっています。先日、南青山にフラッグシップショップをオープンしたポルトローナ・フラウもその一つです。100年以上の歴史を誇る作り手がいくつもあります。
http://www.idc-otsuka.jp/item/from_brand/
http://www.idc-otsuka.jp/poltrona-frau-tokyo-aoyama/
職人が手がけるものづくりは、世界中で衰退しつつあります。職人の後継がいなくなりつつあり、私たちが扱っている商品の中でも10年後には作れなくなるものがあります。
良質な材料も枯渇しつつあります。例えば、18世紀に盛んに使われたマホガニーなど家具に使われる良材のかなりの種類が、ワシントン条約で取引を制限されています。
良質な材料を使って、職人が丁寧につくった家具はますます貴重なものになってきています。アンティークがもてはやされるのは、もはや同じものが作れないからなのです。
大塚家具では、2年前、リユースの取り組みを始めました。徐々に作れなくなってきている良質で貴重な家具が廃棄されるのを防ぐためです。個人宅だけでなく、ホテルの改装などでも、数十年前に作られた高級家具が廃棄されることが頻発しました。中国などで似たデザインのものを新しく作れば、費用も抑えて「綺麗に」改装できるからです。しかし、良材で職人が作った家具は、適切に修理をすれば、その使い心地は簡単な作りの新品とは雲泥の差があり、風格の違いは一目瞭然です。本物の家具が廃棄され、数年で使い捨てにされる家具に取って代わられるというのは皮肉な話です。
100年以上前に作られたものはアンティーク、それより新しいものはオールドやヴィンテージと呼ばれます。大塚家具では、将来ヴィンテージやアンティークと呼ばれるであろうユーズド家具を「リワース」と呼んでいます。修理して再び(リ)生かす価値がある(ワース)という意味です。
当社では社内に修理工房を持ち、20人弱の職人が家具の修理をしています。修理や張替えをして長く使いたい、という方には修理・張替えを、生活が変わるので使わなくなってしまうが良いものなので捨てたくはない、という方には下取りや買取りをお勧めします。
最終回は、家具のイノベーションについてお話しさせてください。
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赤漆文欟木御厨子(せきしつぶんかんぼくのおんずし)
日本で一番古い収納家具は、正倉院宝物にある赤漆文欟木御厨子でしょう。
国家珍宝帳記載の献納宝物で、天武天皇から持統・文武・元正・聖武・孝謙の歴代天皇に伝領されたと言いますから、1000年以上の歴史があります。アンティークの中のアンティークですね。
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