2015.7.13

エクステリア

鈴木光

日本左官業組合連合会

塗り壁の高い機能性

前回の「快適な住空間を創る塗り壁」でも触れましたが、塗り壁は高い機能性を備えています。今回は、その機能性についてお話をさせて頂きます。

塗り壁の抗菌効果

消石灰は高アルカリ性(ph12.7)を示し、接触した微生物の細胞壊死や微生物体内の特定の代謝経路の阻害に働くと言われています。冬期の乾燥空気で、ウイルス等が室内に繁殖するのを抑えるためにも水分・湿分の存在は欠かせなく、壁面の吸湿によってウイルスを抑制させます。そのため冬場の乾燥期間は、加湿器を利用することがより抗菌の効果を高めます。

貝灰の電子顕微鏡写真:×1500粒子が粗く多孔質な状態。

一般に、アルカリ性物質によるpH抗菌作用は、アルカリ側ではpH12以上が有効とされています。微生物が消石灰や焼成ドロマイトの高アルカリ性(pH12.7)に接触すると、微生物の細胞壊死や微生物体内の代謝経路の阻害になります。
現在、消石灰は消毒剤の一つとして農林水産省令「家畜伝染病予防法」で指定されています。近年の新潟県中越地震や大発生した鳥インフルエンザ、口蹄疫の防疫・消毒では、大量に撒かれている様子がマス・メディア等で報道されてきました。消石灰のこのようなウイルスに対する迅速な有効性はフランスのパスツール研究所によっても実証されています。

塗り壁の調湿効果

古くから漆喰は木材と共に調湿効果があると言われており、多孔性の珪藻土を混ぜれば更に呼吸性の高い塗り壁となります。珪藻土やパーライトは断熱効果も高めることが可能です。下塗りに使用する石膏は寸法安定性が良いことが知られています。

塗り壁の吸放湿性能

下地のプラスターボード9.5㎜は30㌘/㎡の吸放湿性能があります。ところが、9.5㎜のプラスターボードにビニルクロスを張ってしまうと12㌘/㎡に下がってしまいます。7㎜ラスボードに中塗りの石膏を8㎜塗ると51㌘/㎡に増加します。さらに9.5㎜のプラスターボードに3㎜の珪藻土を塗ると74㌘/㎡と大幅に改善します。

吸放湿のイメージ図

調湿形仕上塗材の多孔質な塗膜により吸放湿性が得られます。
珪藻土などを用いた吸放湿性のある塗材で室内の調湿効果を得られます。結露対策と、カビ・ダニなどアレルギーの原因といわれるハウスダスト対策に効果が期待できます。

塗り壁のホルムアルデヒド吸着低減効果

ホルムアルデヒドの吸着低減効果は、低減率(%)で90.0~73.0%となり、換気効果としての相当換気量では0.94~0.30m3・h/㎡となりました。消石灰と漆喰壁は共に、ホルムアルデヒドの吸着低減効果が確認されています。

塗り壁のメンテナンス

ビニルクロス・有機性建材は静電気による表面の汚れが発生しますが、漆喰等の汚れは、汚れた部分を消しゴム、砂ゴム・細かい紙やすりを用いて、表層を擦り取ることができてメンテナンスが容易です。 ポルトランドセメント系は、硬い表面を持つため表面の汚れを被せるしかありません。 ビニルクロス張りの壁は、経年の汚れ・破損した時に張替えを要します。

この様に、塗り壁は優れた機能性に加えて、メンテナンスの容易さも長けている、住空間に適した素材です。
次回は、塗り壁の多様な表現と、職人の現状についてご紹介させて頂きたいと思います。


一般社団法人 日本左官業組合連合会 HP