2018.3.12

エクステリア

黄木和志

AVELCO

日本のタイルの歴史

デザインタイル「Maristo」(マリスト)のブランドマネージャー黄木と申します。
アーネストブログ「洒酒落落」のコラムでは、

1 日本のタイルの歴史
2 タイルのトレンド発信源「チェルサイエ」
3 タイルデザインの方向性と、Maristoセレクトアイテム
4 Maristoの新しいチャレンジ!最新LED照明

の4回に分けてお話させていただきます。
私視点にはなりますが、イタリアのタイル見本市「チェルサイエ」でのトレンドについてもご紹介し、少しでも皆様にタイルというものを身近に感じていただければと思います。

皆さんは「タイル」というとどんなものを思い浮かべますか?
お家の水回りを彩る、このようなイメージでしょうか。

それとも、お洒落なカフェの壁でしょうか。

洗練された意匠性の高いもののような気がしますよね。それでは、タイルがこのようなイメージを確立するまで、どのような変化を遂げてきたのかちょっとだけ振り返ってみましょう。
実はタイルの定義は、「床壁に貼り付ける小片の薄板の総称」なのです。日本の江戸時代以来用いられたなまこ壁や、寺院建築の床に使用された敷瓦もタイルの先祖といえますね。

なまこ壁

それでは、今身近にある洋風のタイルはいつごろから見られるようになったのでしょうか。
明治半ばには、白地に藍色の模様が入った本業敷瓦が台所・洗面所・風呂場に防水仕上げ材として使われていました。本業敷瓦は粘土の湿式押し出し製法です。和の印象の強いタイルだったためか、あまり長くは流行らなかったようです。

そして明治終わりごろには、粉末を原料とし、乾式プレス成形された美しいデザインのマジョリカタイルが生産されるようになりました。イギリスのタイルを模したもので、鮮やかな色彩と凹凸が特徴です。
やがてこれらを東南アジアへの輸出もするようになり、現在もベトナムや台湾の古い建物に、日本製とみられるマジョリカタイルの使用を確認することができます。

和製マジョリカタイル

では、外装用途としてのタイルの発展に目を向けてみます。日本の近代洋風建築の発展に欠くことのできない材料の一つに煉瓦があります。しかし、関東大震災により煉瓦造りの建物が地震に弱いことが判明しました。それまでは構造躯体であり、かつ表層材の役割をしていた煉瓦でしたが、躯体を覆う化粧煉瓦が登場したのです。この煉瓦タイルの登場により外装タイルは躍進しました。

化粧煉瓦 東京駅

大正~昭和初期にかけてのタイルは、煉瓦や石を模し、機能面においては本物を超えようとした努力が見られます。花崗岩を模した白系タイルが、病院や大企業のビルの外壁で多く使用されるようになりました。清掃性に優れ、清潔な外装を保つことができました。

馬車道大津ビル
フランク・ロイド・ライト風スクラッチタイル

さて、大正時代半ばには石の”フェイク”としてのタイルではなく、タイルでしか表せない独特な表情も好まれるようになりました。焼成温度や酸素量、また釉薬の質や量によって窯の中で表情が変化する「窯変タイル」の登場です。

Maristo「和染(ワセン)」
Maristo「Sapido(サピド)」

今では、様々な表情のタイルを選ぶことができ、贅沢な時代だと感じますね。ここで、タイルの歴史についてのお話を終わりにしようと思います。次回は海外のタイル事情に目を向け、イタリアのタイル見本市「チェルサイエ」についてお話できたらと思っております。


Maristoウェブサイト

—ここからアーネストのお知らせです—

「こだわりを極める住まい展」を京都で開催致しました。

3月3日(土)~5日(月)、京都の嶋臺ギャラリーにてアーネストアーキテクツの展示会を開催致しました。
会期中は連日多くのお客様にご来場いただき、アーネストの作品をご体感いただけましたことを大変嬉しく思っております。この場をお借りし、厚く御礼申し上げます。
今後も広く皆様にアーネストの作品に触れていただける機会を設けられるよう努めてまいります。