第一回│屋外家具とはどんな家具?
2017.4.9
エクステリア
久野和雄
NICHIESU
屋外家具とはどんな家具?
皆様が”屋外家具とはどんな家具でしょうか?”と聞かれたら何とお答えになるでしょう?”屋外で使う家具”というのが最も一般的な回答かもしれません。
私どものように屋外家具専門に長年仕事をしていますと、この答えは間違いではありませんが、十分ではありません。なぜならほとんどの屋外家具はずっと屋外に置かれていますが、使われている時間は1日24時間の内、1年365日の内ほんのわずかな時間にすぎません。つまりほとんどの時間は人に使われず、屋外に放置されている宿命の家具なのです。普通の家具、つまり室内で使われる家具にとっては決して遭遇しない、空から落下するすべての物との接触にさらされる過酷な環境、つまり雨に濡れ、冬場には雪が積もり、強烈な紫外線をたっぷり浴び、埃やPM2.5や樹液から鳥のフンにいたるまでありとあらゆる落下物の攻撃を受けながら、いざご主人様がその家具をお使いになられる時には、快適で、清潔で、安全で、ご主人さまにつかの間のひと時を、リラックスした、幸せで満ち足りた、心地よい時間を過ごしていただくことをひたすら心がける忠実なしもべの様な存在なのです。
もちろん家具ですので、フォルムや色といったデザインや、質感、触感、座り心地といった要素は重要ですが、それ以前に屋外の過酷な環境に耐える強靭な体力を持っていなければお話になりません。その為、屋外家具に求められる最も重要な要素は使用する素材とその表面処理品質ということになります。
それでは、屋外家具に適した素材とはどんなものでしょうか?
家具にとって屋外環境で最も厳しいファクターは雨、紫外線、ほこりの3つに分けられます。そしてそれぞれのファクターに強い素材が最適な素材ということが言えます。雨は、金属には腐食を、木材には腐敗を、樹脂には分解をもたらします。紫外線は、金属には影響を与えませんが、樹脂や木材に分解や変質をもたらします。
金属の腐食とはさびると言うことですが、これは化学的には金属が酸素と結合する酸化という現象です。金以外の金属はすべて酸化しますが、その時にできる錆には人間にとって良い錆と悪い錆があります。
良い錆の典型は銅にできる緑色の錆(緑青)です。
この錆のお蔭で今から5000年前に作られた青銅器に博物館で出会え、人類がどこから来てどこへ行くのかを考えることができるわけです。銅にできる錆は非常にち密で安定していて、いったん錆ができるとそれ以上の酸素との接触を遮断することにより数千年を経ても形状を保ちながら銅が残ることができるのです。
一方悪い錆の典型は鉄にできる赤さびです。
この錆は粗雑で不安定な構造なので錆が出来ても酸素を遮断することができないのでどんどん酸化が進み、最終的にはぼろぼろになり形状を保つことができません。この鉄の欠点を克服することを目的に開発された金属がステンレスですが、ステンレスには数パーセントのクロムが含有されていて、このクロムがさびやすく鉄がさびる以前に、緻密で安定した酸化クロムの錆を身にまとうので酸素が遮断され鉄は錆びないというわけです。
屋外家具に最も多く使用されるアルミは本来非常に錆びやすい金属ですが、その錆がアルミを守っているのです。この錆を安定的に作る方法がアルマイトです。屋外家具に適した金属素材はアルミ、ステンレスということができますが、鉄は安価で強度があるので良く使われます。但し、悪い錆が出来る金属なので亜鉛メッキやカチオン電着塗装などの防錆対策が必須です。
木は温かみがあり加工が容易な家具には最適な素材です。しかし日本の高温多湿な夏や、乾燥した寒い冬の気候条件下、屋外で使用すると、腐食や割れの問題が発生します。屋外使用に最適な木はボートの甲板に使用されてきたチークです。
樹脂は形状表現に優れた家具には理想的な素材ですが屋外使用での弱点は紫外線です。紫外線耐候剤、顔料をセレクトしたPP,PE,PVCがおすすめです。
次回の第二回は4月16日(日)に掲載予定です。
引き続きお楽しみください。