2019.11.5

こだわり

小泉裕

IDEAL TOKYO

インテリアにおけるホームエンターテイメント

先回はホームエンターテイメントの素となる音楽・映像コンテンツについて解説いたしました。
今回はホームエンターテイメントとインテリアとの関わりについて私なりの考えをご紹介して参りたいと思います。

日本国内では1960-70年代にオーディオブームと呼ばれる時代(オーディオシステムがあることが知性と財力のシンボルであった時代)がありました。
今で言うところの大型テレビのように、大きなスピーカーとアンプが家にあることが「その家の格」を表していた時代でしたが、1979年ウォークマンの登場により、音楽を聴くスタイルが多様化したことに加えて、軽薄短小こそ技術の結晶という風潮もあり、それまでのオーディオから簡易的なコンポやラジカセのユーザーが増えていき、重厚な高級オーディオは一部のオーディオマニアのためのもの、とその性質を変えていきました。

本来、スピーカーやアンプなどハードウェアも居室に存在する限り、インテリアの一部としても扱うべきものですが、オーディオマニアにとっては居室の快適性や美しさより、重厚長大なハイスペック機器を無理やり部屋に押し込めたり、家具よりもスピーカーの置き場所に拘ったり、機器同士を接続するケーブルを何にするか、を重要視することが優先されました。

また、メーカーから発売される製品もまたスペック最優先でプロダクトのサイズや熱量、デザインなどインテリア性とはほど遠いものばかりが発売され、ますますオーディオというものが特殊な趣味の世界と化していきました。本来、音楽鑑賞をしたり、映画を楽しむ、ということはワインやシガーのような「素敵な趣味」の一つであったはずですが、オーディオやホームシアターに限っては一部マニアのための「特殊な趣味」というイメージになってしまいました。

多目的なリビング空間はもちろんですが、たとえオーディオ・ホームシアター専用の部屋だとしても、その居室で快適に過ごすためにはハードウェアをインテリアの中で美しく整えていく必要があると考えます。

座り心地の良いイージーチェアとコーヒーで読書を楽しんだり、香り高いワインを最高のグラスで穏やかな照明のなかで味わったり、同様にホームエンターテイメントにおいても、単にハイスペックな機器だけあれば良いということではなく、「どのような環境で」または「どのようなスタイルで楽しむのか」というシーンを思い浮かべながら、お部屋のレイアウトや家具、そして照明との関わり方を整えていくべきではないでしょうか。

食事を楽しみにレストランへ出かけた時には「壁を向く席」に案内されるより、「外の景色を眺められる席」へ案内されたいものです。
同じように居室の中で人が心地よいと感じる居場所や景色、向きをヒントにすると音楽や映像を楽しむホームエンターテイメントにおいても居室ごとに最適なレイアウトがあるのではないかと思います。明らかに眺めていたい景色があるにも関わらず、景色を塞ぐようにスピーカーを置いたり、スクリーンを降ろしてしまったり、本質的な要る・要らないを考えず「とりあえず」「なんとなく」大型TVを置いてしまったことで、家具のレイアウトが大きく制約を受けている状況に遭遇することが多々あります。

よって、新築やリノベーションの計画時にこそ目に見えるインテリアだけでなく、目に見えない過ごし方をサポートするホームエンターテイメントの在り方を同時に検討いただくことが機能性、そして操作性という面でも長くストレスのないホームエンターテイメントが実現すると思います。
自動車に例えるならナビゲーションやオーディオシステムを納車した後からゴテゴテと取り付け車内インテリアを壊すより、最初から車内デザインとして美しく設えるべき、という考えにも共通するかもしれません。

皆様にはホームエンターテイメントの最終的な導入如何にかかわらず、計画段階から「どのように音楽や映像が楽しめたら良いか」という提案をさせていただければ選択肢は大きく広がりますので、是非お気軽にご相談ください。

次回は実際に計画段階から計画・導入した事例をご紹介してまいります。


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