2021.11.8

こだわり

Earnest architects

転換期を迎える建築スクラップ&ビルドからの脱却

10月から連載を行っている”住宅以外の設計”ですが、今回が最終回となります。
最終回を飾るのは「マンション併用住宅」です。
日本では新しい建物が好まれ、古い建物は年月が経過するごとに建物の価値が減ってしまうのが現状です。それは賃貸にも同じことが言え、築年数を賃貸契約をする物件の判断基準にされている方も多いと思います。そのため、建物をメンテナンスして維持するよりもいわゆるスクラップ&ビルドと呼ばれる、古い建物は壊して新鋭設備の新しい建物に建て替え、資産価値を保つ方法がスタンダードになっています。
しかし、マンションの多くに使用されている構造の鉄筋コンクリートは、正しくメンテナンスを行えば100年もつと言われるほどの、耐久性の高い建物です。環境問題対策についても取り上げられることが多くなった昨今、スクラップ&ビルドからの脱却を検討しなければならない、転換期を迎えているのではないでしょうか。それには、建物の寿命をいかに永く、時代を超えて愛される建築にしていくことが大切です。

スクラップビルド
繰り返されるスクラップ&ビルド


年月が経過しても見劣りしないデザイン

そこで重要になるのが建物の付加価値です。日本の賃貸物件でも一部にヴィンテージマンションと呼ばれる、築年数が経過してもその不動産価値を落とさない建物があります。いくつかの条件があるのですが、そのひとつに”年月が経過しても見劣りしないデザイン”が挙げられています。
今回ご紹介する「マンション併用住宅」はまさに、普遍的な造形美をもつ重厚感のある作品です。

高級賃貸併用住宅
造形美を前面に出した外観

坂の上に林立する重厚な石壁が坂を上るにつれその存在感を際立たせ、自然石の持つ圧倒的な力強さと造形美が相まって、見る人を引き付ける悠然とした佇まいの外観。この建物は石・水・木を効果的に使用することで、オーナーが希望した都市部にありながら自然環境を取り入れ、リゾートの要素を備えた「アーバンリゾート」を叶えています。都市でも住まいに取り込むことができる光や風に水と緑を加え、仕上げ材には天然石を用いて都会ならではのラグジュアリーさをプラスしました。
3・4階にオーナー宅、1・2階は賃貸とし、共有エントランスは自然石を小端積みにした壁面に水が流れ落ちる滝を設え、その滝を臨みながら階段を上がると放射状に賃貸それぞれの玄関を配置しました。また、滝の水音はエントランスに流れるBGMとなって訪れる人びとを癒す、賃貸物件の付加価値を高める演出を行って差別化をはかりました。造形美を前面に出した外観は同一地域で一番の建物にすべく、プランニングしたデザインです。

賃貸併用住宅のエントランスデザイン
滝が出迎えるエントランスホール

もちろん、オーナー宅はこれまで当社が培ってきた高級住宅の設計力を生かしたデザインで、オーナーが求める「アーバンリゾート」を具現化しています。
お車中心の生活スタイルとのことで地下に専用のビルトインガレージを設け、ガレージから3階にあるエントランスに直接アクセスできる動線です。各部屋の開口部を大きくとり、各所にバルコニーを設置した設計は、外部と内部をつなぐ架け橋になるバルコニーから都市でも味わうことのできる初雪や桜吹雪に名月など、四季折々の美しい瞬間を逃さず堪能できるように、との配慮からです。
時間に追われるような都市での生活ですが、家に帰れば暮らしの中に自然がそっと寄り添う空間なら、都会のオアシスのように住み手の安息の地となります。それは、時が経過しても変わることの無い住まいに求める本質ではないでしょうか。

ビルトインガレージ
オーナー専用のビルトインガレージ
バルコニーのあるリビング
バルコニーを多用した間取り


付加価値の重要性

今回の連載でご紹介させて頂いたように、住宅以外の設計も多く受け賜るようになり思うことは”付加価値の重要性”です。基本的な要素を備えることは当然で、その建築は何を目的としてどんな付加価値が必要なのか。それを見極める洞察力と形にするデザイン力に技術力、それが設計事務所の力量だと思っています。
当社は、1982年に設立したアーネストホーム株式会社の設計分室としてスタートした設計事務所です。早いもので、間もなく40年の時が経過しようとしています。当社が設計した作品が、これからも時代を超えて愛されるよう、アーネストアーキテクツは努力を続けて参ります。


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