最終回│これからも歩み続ける気仙沼
2020.9.28
オーナーズ
村田憲治
村田漁業
これからも歩み続ける気仙沼
来年で震災から10年を迎え、気仙沼にもやっと日常が戻りつつあります。
前回お話した遠洋鮪延縄漁業ですが、出港の際に「出船おくり」が行われます。「出船おくり」とは、漁に出る船を乗組員の家族や友人、船主、関係者が航海の安全と大漁を願って岸壁から見送る、気仙沼の行事です。今、この「出船おくり」が観光イベントのひとつになっています。
気仙沼の女将さんが結成した「気仙沼つばき会」のみなさまの取り組みによりご来訪の方々も参加できるようになり、気仙沼の観光情報サイトでも「出船おくり」の日時が記載され、観光客の方も参加できる行事となりました。
漁船は大漁旗が飾られ、船主の好みの曲などを鳴らしながら出港し、見送る家族は色鮮やかなテープと福来旗を振って見送ります。
当社の船が出港する際も「出船おくり」を行いますが、船が無事に出港していく姿を見るとホッとします。船を無事に出港させるためには、さまざまな準備があります。今年は特に新型コロナウイルスの影響で気苦労が絶えませんでした。
外国人船員はギリギリ入国することができ、船員全員に検査を受けてもらいました。船は3密です。もし、船員の誰かが無症状で発症していたら海上で船員全員が新型コロナウイルスに感染してしまいます。そのため、今回は「出船おくり」から2週間は安心できませんでした。
2週間が過ぎ、体調を崩した者が居ないと報告を受けた時、やっと肩の荷が下りた気持ちになりました。現在も元気にマグロを追い求め、太平洋を中心に世界の漁場を渡っています。
震災から10年を迎えるにあたり、当社の復興プロジェクトも来年竣工を迎える本社の建て替えで、ひとまず終了となります。
本社は気仙沼港の目と鼻の先にありましたが、先代が残してくれた鉄筋コンクリートの頑丈な建物で、倒壊は免れました。しかし、防潮堤を再建築する新たな計画は国道を最大で約2.5メートルかさ上げし、防潮堤と国道の高低差を最大で70センチに抑えるため、取り壊しとなりました。
先代は船を何隻も造船していたので、建築にも詳しく、以前の本社は先代の想いが詰まった建物でした。しかし、地域の安全のためには仕方ありません。そのため、新しい本社も以前の面影を残した佇まいになる予定です。
時代が移り変わっても、「気仙沼の新鮮な魚を届けたい」という信念は創業当時から変わることはありません。
震災から10年が経過しようとしている今、東日本大震災で被災し、再建を進めてきた「浮見堂(うきみどう)」が2020年7月に完成し、その他にも、「氷の水族館」や「シャークミュージアム」、内湾地区の再生を図る観光集客拠点とした商業施設「迎(ムカエル)」などやっと復興が形になり、さぁこれから!と言う時に世界を襲った新型コロナウイルス。気仙沼の観光も打撃を受けています。
当社も給食の停止や飲食店の自粛営業。宴会やイベントの中止によって大きな影響を受けました。
しかし、10年かけて一歩一歩着実に進めてきた復興プロジェクト。気仙沼はこれからも歩みを止めることはありません。皆様が安心して気仙沼にお越し頂ける日を心待ちにしています。
その日が来るまで、気仙沼の海の幸は通販でご賞味頂ければ幸いです。是非、川印・気仙沼ブランドの新鮮なマグロや海の幸をお楽しみください。