2020.1.20

キッチン

相場文子

allmilmo

ドイツキッチン事情

私は約20年前からドイツキッチンに携わっております。もともとは輸入家具やインテリア全体にかかわる仕事をしていましたが、たまたま入社した会社でキッチンを担当することになり、それ以降は輸入キッチン、特にドイツキッチン一筋です。

私がキッチンを扱い始めた頃は、ドイツには150社ほどのメーカーが存在し、ローブランドからハイブランドまでお互いに切磋琢磨して商品開発を行っていました。当時、ドイツ北西部Bielefeld付近にはキッチンメーカーの約90%が存在し、キッチン王国ドイツの中心地といった印象でした。残念ながら経済状況の変化やローブランド、他のヨーロッパブランドの台頭により現在では約3分の1の数になってしまいました。しかし、個人的には今でも世界の中でお手本となるキッチンには変わりないと思っています。

もともとシステムキッチン発祥の地であるドイツではパーチクルボードの開発などが行われており、より機能性、耐久性に優れた商品を作り出すという基盤があります。各メーカーはヨーロッパのみならず、世界中で製造されている優れた金物や材料などを選定し、デザイン性、品質の高いシステムキッチンを作ってきました。それぞれが検査基準を設け、敷地内の研究所で引き出しの耐荷重テストや扉材の耐摩耗性、耐水性テストなどを繰り返し行い品質の維持に努めています。ドイツのシステムキッチンはモジュール制で、キャビネットと呼ばれる引き出しや吊戸棚などが5センチピッチ幅で作られています。このモジュール寸法が非常に考えられており、とても美しく、世界のキッチンの基準となっています。

キッチンの展示会というとイタリアミラノで開催されるユーロクッチーナと2年に1度交互に開催されるドイツのケルンメッセが有名です。イタリアはガラスや石などを使って印象的な美しいキッチンを作り出し、ドイツはどちらかというと木やメラミンなどを使って機能的で耐久性のある実用的なキッチンを作り出しています。個人的見解ですが、イタリア車とドイツ車に近い感じがします。
あまり知られていませんが、ドイツでは毎年9月にそれぞれのショールームなどで開催される「ハウスメッセ」と呼ばれる新作発表会があります。このイベントのためだけに、時には古民家などを借りて最先端のキッチンと伝統的な建築を融合したデザインを試行錯誤しながら工夫して展示しています。

このようなドイツキッチンですが、今から20年ほど前の日本には代理店が10社くらいはあったと思います。当時は今と比べて日本のキッチンとの品質やデザインの差がかなりあり、現在よりもはるかに高級というイメージで、なかなか手の届かないものという印象でした。以前に比べるとちょっと少なくなってしまい元気がない印象の輸入キッチン業界ですが、現在私が勤めているアルミルモも含め、日本で入手可能なドイツブランドが5社ほど存在します。

2003年 マット塗装扉+ダークオークパネル、天板はメラミン
2003年 チェリー突板扉、天板は御影石
2010年 フレンチクラシック扉、天板は御影石
2013年 ウォールナット(吊戸)+ガラス扉(ベース)、天板はステンレスとウォールナット

次回はドイツキッチン「アルミルモ」の特徴をご紹介いたします。


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