第二回│小馬鹿にしてたインビザライン
2015.9.20
オーナーズ
竹内敬輔
医療法人きらめき
小馬鹿にしてたインビザライン
2007年、矯正治療に携わって4、5年経ったころでしょうか。アメリカからやってきたというマウスピース矯正『インビザライン』のことを知りました。「マウスピースで歯が動くなんてあり得ない。まあ、マルチブラケットシステム(ブラケット、ワイヤーを用いた矯正システム)に自信のないドクターがやるんだろう。」という程度にしか考えていませんでした。そうです、完全に小馬鹿にしていました。
当時の僕は『今よりもっと治療が上手くなりたい』という気持ちから、必死にありとあらゆる矯正治療の講習会に参加し、多くの先生から『マルチブラケットシステム』について学ばせていただきました。そして、多くの患者様の矯正治療に携わってきました。「徐々に徐々に、シビアなケースでもマルチブラケットシステムで、完成度の高い矯正治療を行うことができるようになってきた。」そう感じる一方で、どうしてもこの装置を歯に接着することが、なんだか患者さんにとって、すごく嫌なことをしている気がして気が引けるのです。痛いし、食事の度に食べ物が挟まるし、装置が外れたりワイヤーがとび出たりなどの緊急事態はあるし、、、かといって無理矢理つけているわけではなく、治療のためだから仕方がないと自分に言い聞かせ、患者様にもそう説明し続けてきました。
そんなある時、「前歯の捻じれを治したい、けれど絶対にワイヤーは使いたくない!」という中学生の患者さんがいました。よくある要望です。そして、いつもであれば説得に説得を重ね、納得してもらいマルチブラケットシステムでの矯正治療をスタートしていく流れです。しかし、この中学生の患者さんはそうはいきませんでした。「ワイヤーなら絶対やらない!」と言うのです。どれだけ説得しても納得してくれません。
仕方なくマウスピース型のアライナー治療をやってみることにしました。その代わり、うまく治らなかったらワイヤーで治療をする約束を取り付けたうえで、最初の印象採得(印象剤というゴムみたいなもので歯型を採る作業)を行いました。
できあがった歯型上で僅かに歯を移動させるようデザインした技工指示書(装置の設計図)を作成し、矯正専門の技工所でアライナー第1号の作成を作成しました。
いよいよ患者さんが来院し、第1号を装着しましたが、フィット感があまりよくなく、しかも本人から「痛い!」と…。「これを1日20時間以上使う自信ある?」と尋ねたところ「無理かも…。」との答え。その日はもう一度新たに印象採得を行い終了しました。
なぜ、装着のフィット感が悪く痛みが出たのか?そこを考え、前回より歯の移動量を半分にデザインしたアライナー2号を作成しました。そして2週間後に来院してもらい第2号を装着。ぴったりとはまり、これならば使えそうということで、1日20時間以上使うよう説明し、終了しました。
そして2週間後、前に痛くて使えなかった1号をおそるおそる入れてみたところぴったりフィットし、しかも「そんなに痛くない。」と患者さん。これならば使えそうとのことで、ここで、さらに次のアライナー3号の印象採得を行い終了。そしてまた2週間後、1号にも慣れてきたとのことで第3号へ進み、第4号の印象採得を行い終了。そして2週間ごとに、ようやく順調にすすんでいたと思った矢先、途中全然思うように歯が動かなくなってしまいました…。
なぜ動かなくなったのか?原因を考え設計をやり直し、アライナーを何度も作り直しました。第10号くらいまできたところでようやく予定した結果を得ることができました。
やればできるんだ!マルチブラケットシステムを使わずに治った!!患者さんもすごく嬉しそう!!!
この患者様の治療を期に、アライナー治療へ本気で取り組み始めました。様々な種類のアライナーを使い、様々な患者様の治療を行っていきました。そしてたどり着いたのが、あの小馬鹿にしていた『インビザライン』でした。
何から何まで計算されつくしたこの治療は、僕が抱いていたアライナー治療に対する不満を解消するものでした。他のアライナーとはまるで別次元の精度で治療を進められるのです。そして、その奥の深さ…。これならきっとどのようなケースでも治せる時代も来るのではないだろうか、そう思わせてくれる装置でありシステム。それが、インビザラインです。
次回のコラムでは、実際のインビザライン治療をさらに掘り下げてお伝えできればと思います。