アーネストコラム酒酒落落  Vibel(ヴィベル)代表   中島 洋子さん 最終回「家」

「家」



4週間にわたって担当をさせていただいたブログですが、いよいよ今回が最終回となりました。今日は、私の本業である「子ども部屋」の枠を越えて、「家」をテーマにお話をしたいと思います。



フランスへの3年間の留学経験を経て、Vibelをオープンして10年半。

その間、日本人のお客様だけでなく、日本に住む外国人のご家族、国際結婚をされたカップルのご家族、その中には、Vibelの子ども部屋を海外で最初につくり、その後日本に赴任して、再び海外へ、と世界を転々としているファミリーも少なくありません。そんな数多くのファミリーと、子ども部屋を通じてお付き合いをさせていただいてきた中で、「家族」という概念、そして「家」という概念について考えさせられる機会も多々ありました。

今回は、その中でも特に印象に残っている、「家」についてお話をしたいと思います。


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3人のお子様のためにフランスでVibelの子ども部屋をつくり、その後チェコ赴任を経て東京にいらしたフランス人ファミリーの「家」。

まず、玄関を入りリビングルームへ続く廊下には、モノクロで撮影された相撲の稽古の写真が飾られていて、訪れた人の目を引きます。それは写真と相撲が好きなご主人が、日本へ来るたびに撮影をされたものだそうです。そして、リビングルームには、世界を転々とする中でも、この家族がずっと愛用している、リーン・ロゼの赤いソファ。世界を転々とする生活の中だからこそ、家族団らんの象徴であるこのソファーは、手間がかかっても行く先々の国に持っていくのでしょう。リビングルームには、中国に赴任した際に買い求めた様々な調度品、チェコで購入したマリオネットなどが、一見ミスマッチなように飾られているのですが、この家を訪れた人は、この家について何一つ言葉で説明されなくても、ここに住む家族がどんな家族で、今までどんな歴史を刻み、現在に至っているのかが、強烈な印象となって頭の中にインプットされます。

この家族にとって、「家」とは、海外赴任先の賃貸マンションであっても、その家族がどんな家族なのかを表現する、大切な手段。この家族にとっては、自分たちらしさがない空間は「家」になりえないのだな、ということを強く感じた瞬間でした。



そんな家族の3人のお子様の子ども部屋は、当時どんな独創的な子ども部屋をデザインしようかと夢中になっていた私から見ると、いたってシンプル。でも、それぞれのお部屋がなぜそのようにデザインされているかを知って、Vibelを日本にオープンして3年目にして、初めてVibelの子ども部屋の「本質」に触れた思いがしたものです。



当時11歳だった長女は、読書が好きで、部屋にいるときはずっと本を読んでいるので、広いお部屋は必要ないと、3人のうちで一番狭いお部屋を両親が選びました。


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(長女の部屋)


ベッドの上は読書ができるようにベッドヘッドにクッションがあり、持ち物のほとんどが本!というくらい、大きな本棚がありました。デスクに座っているとき「横に棚がほしいから」という本人の希望で、デスクサイドの壁にはキューブ棚を。「賃貸なのにわざわざ壁に棚をつけるなんて」という心配よりも、子どものその時その時大切に思うことを優先させているのでしょう。


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(長女の本棚)




当時8歳の次女の部屋は、自分で衣装をつくって劇をするのが好きという彼女のために、一番広いお部屋に。一人部屋なのに二段ベッドなのは、ベッドを舞台にして、ダイナミックに劇の舞台が演出できるからだそうです。ベッドサイドにある棚は、コレクションが好きな彼女が、様々な国で集めた貝殻や宝物をディスプレイするためだそう。子どもが「飾る」ために棚を必要とする、ということが、大人になってからのインテリアへのこだわりにつながるのだな、と感じました。


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(次女の部屋)




そして当時5歳の長男の部屋には、一番目立つところに背の低いシェルフがあり、このシェルフには、恐竜が好きなこの子が、その日の気分で恐竜たちを並べるためにつくられているそうです。両親は、たくさんある恐竜を、バスケットにいれようと思っていたらしいのですが、この子にとっては、目に見えるところに並べておくことがとても大事だと、本人が希望したそうです。


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(長男の部屋)



家具のかたちやデザインそのものはシンプルでも、どう使うかということこそが「個性」なのだということを改めて感じたこの家族との出会いでした。




また、インテリアの仕事を通じて知り合いになったある家族は、日本人のご主人様とアメリカ人の奥様、男の子と女の子の2人のお子さんがいて、東京でマイホームを建てられました。

世界を旅して蚤の市で掘り出し物を見つけるのが好きだというお二人らしく、アジアを旅していて道に捨てられていた扉がお家の中に使われていたり、形も大きさもまちまちなランプや雑貨たちが無造作に飾られているのがとても素敵で、バスルームの壁のタイルは、自分たちで絵を描いてデザインして、自分たちでつくったそうです。

こんなこだわりは、誰にでも真似できることではありませんが、この家も、間違いなくほかの家族ではない、この家族にしか作ることのできない「家」です。




この2つの「家」では、「家族」という概念と「家」という概念が等しい、ということなのかもしれません。一つ一つの家族がかけがえのないものであるように、それぞれの家はその家族の「個性」を映し出すものであること。そして家族の一人一人の「個人」が日々成長し変化しても「家族」であり「夫婦」であり「親子」であるために、「家」も日々成長し、変化していく空間であること。


「子ども部屋」というのは、「家」の中ではごく限られた空間ではありますが、「子ども部屋」を通して見て感じた「家族」というものへの思いは、私にとってVibelの仕事を通じて得られた、一番の収穫でもありました。


2回目のブログでご紹介をさせていただいた、子ども部屋研究の第一人者、北浦かほる先生が、住まいをテーマにした世界の絵本の分析をされており、その中で今回のテーマに相応しい1冊がありますので、最後にご紹介させていただきます。



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(ペギーのちいさな家表紙)



1994年にイギリスで初めて出版された「ペギーのちいさな家」という絵本は、森の中でたったひとりで暮らしていたペギーという木の人形が、自分の住むところを探して旅をするという物語です。

様々な家を訪ね歩いたあと、村はずれの小さな家にうさぎと一緒に暮らし始め、いつまでもなかよく暮らしました、というお話なのですが、そのエンディングが物語っているのは、ペギーは心から気の許せる相手(うさぎ)に出会って初めて「家族」ができ、心から気の許せる相手と一緒に住む場所こそが「家」になったということです。


「家」という空間は、世界でたった一つの、その家族のためだけにカスタマイズされた空間です。その家族にしかつくれない、世界でたった一つの家は、どんなに高いお金を払っても、どんなに有名な建築家やインテリアデザイナーが設計しても、それだけでは決してできるものではありません。その家族が、自分たちはどんな家族で、どこからきてどこへ向かおうとしているのか、家族のそれぞれが自分自身問いかけることから始まるのではないでしょうか。


これから「家」を建てようとしている方々は、こんなシンプルなことですが、「家」と「家族」の原点について考えてみるのはいかがでしょうか。



4週間、稚拙なブログにお付き合いいただき、ありがとうございました。








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